バイナリー発電に向かない水の性質は?ウイークエンドQuiz(2/2 ページ)

» 2013年05月24日 17時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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正解:

 a. 沸点が高い

ミニ解説

 150℃以上の高温の水(水蒸気)を利用できるなら、蒸気タービンが優れている。しかし、蒸気タービンの利用できない温度の廃熱は多く、温度が低いほど、廃熱の絶対量も増えていく。これを有効に使う発電方式が、バイナリー発電だ。最低70℃以上の熱が得られるのであれば発電が可能だ*1)

 バイナリー発電は以下のような仕組みで熱をやりとりする。まず、熱源から得た熱水で作動媒体(図1中黄色の部分、二次媒体とも呼ぶ)を加熱・気化させる。気化した作動媒体で蒸気タービンなどを動かし発電する。その後、冷却水で作動媒体を液化し、再び熱源に持って行くという形だ。作動媒体とは熱を運ぶための物質で、今回質問に上げたのもこの作動媒体の性質に関するものだ。

図1 バイナリー発電の仕組み(地熱と組み合わせた場合)。出典:第一実業

 作動媒体は沸点が低く、低温で蒸発する物質でなければならない。これはバイナリー発電がもともと低い温度の熱を利用するために開発されたからだ。このため、水はこれまでほとんど使われていない*2)。従って答えはa。バイナリー発電の作動媒体の重さは発電効率にあまり関係せず、この温度では水の腐食性はほとんど問題にならない。bとcも誤りだ。バイナリー発電ではほとんどの場合、作動媒体を完全に密閉して運転する。水などの物質をもれなく循環させる技術は確立しているため、dも誤りだ。

 最後に、国内で扱われている主なバイナリー発電機*3)のメーカーが採用した作動媒体を紹介する。いずれも水の沸点100℃を大きく下回る物質である。上の2種類はいずれもフッ素を分子内に含む炭化水素だ。なお、作動媒体は熱の運搬能力が高いことも求められる。

*1) バイナリー発電であっても熱源の温度が高いほど発電量は増える。
*2) 低圧状態で循環させることができれば、水を作動媒体に使うことも可能だ。ただし、低圧状態を保つことや、運搬できる熱の量が減ることから開発のハードルは高い。
*3) この他、アルバック理工も小型のバイナリー発電機を実用化しているが、作動媒体の種類を明らかにしていない。
*4) ターボ冷凍機などにも使われる。塩素(Cl)を含まない(CF3CH2CF2H)ため、ハイドロフルオロエーテルと並んでオゾン層破壊係数が0である。

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