再生可能エネルギーの制度も見直し、買取義務は送配電事業者に動き出す電力システム改革(2)

電力会社による垂直型の市場構造を打破して、発電・送配電・小売の機能別に事業者を再編する。これが電力システム改革を推進するキーポイントになる。従来は再生可能エネルギーの買取義務をほぼ全面的に電力会社が負ってきたが、改革後は新たに誕生する送配電事業者に移行する見通しだ。

» 2013年10月23日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第1回:「電力会社から小売事業者へ契約を変更しやすく」

 2012年7月に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度では、発電設備ごとに2種類の契約を結ぶことが義務づけられている。1つは発電した電力を買い取る「特定契約」、もう1つは発電した電力を送配電網で受け入れる「接続契約」である。現在は2つの契約ともに電力会社と発電事業者のあいだで締結するケースが大半だ。

 ところが改革の第3段階として2018年にも実施する「発送電分離」の状態になると、電力会社は発電・送配電・小売の各事業者に分割される。そのために買取制度の契約主体も変更する必要がある。制度を管轄する資源エネルギー庁は、送配電事業者か小売事業者のいずれかが発電事業者と契約する方式を検討中だ(図1)。このうち有力なのは送配電事業者に契約を集約する方式である。

図1 固定価格買取制度の変更案。出典:資源エネルギー庁

 送配電事業者に集約するメリットはいくつかある。まず発電事業者は電力を買い取ってもらう前の段階で、送配電事業者に発電設備の接続を申し込む必要がある。接続契約と特定契約を同じ送配電事業者で一括できれば、発電事業者にとっては手続きが簡便に済む。この方式ならば電力の供給と対価の支払いが事業者間で完結する(図2)。

図2 送配電事業者に契約を集約する案。出典:資源エネルギー庁

 加えて再生可能エネルギーには天候などによって出力が不安定になる問題がある。送配電事業者であれば、多くの発電事業者から電力の供給を受けることによって、個々の出力の変動を調整しやすい。この点は小売を専門にする事業者には難しい。

 一方で小売事業者が発電事業者と契約を結ぶ方式に変更すると、契約の自由度が高まって競争状態を促進できる期待がある。とはいえ電力の供給状況を不安定にしかねない問題は重大で、現実的な方式とは言いがたい。

 そうなると発送電分離を実施した後も当面のあいだは、電力会社から分離・独立する地域単位の送配電事業者が買取制度の契約を引き継ぐことになるだろう。ただし一部の地域では新しい送配電事業者を設立する動きも始まっている。政府が風力発電に適した地域に限定して優遇措置を設ける「特定風力集中整備地区」だ。

 経済産業省が2013年度の予算で250億円を投入する大型のプロジェクトである。北海道や東北の一部を対象に、国が費用の2分の1を補助して送配電網を整備する。新設する特定目的会社(SPC)が送配電網を保有して、風力発電の事業者から利用料を徴収する仕組みを想定している(図3)。

図3 「特定風力集中整備地区」を対象とした送電線の整備スキーム。出典:資源エネルギー庁

 2013年度の補助対象になる送配電事業者は2社に確定した。三井物産・丸紅・SBエナジーが出資する「日本送電」と、豊田通商・東京電力の傘下にあるユーラスエナジーホールディングスが出資する「北海道北部風力送電」である。それぞれ北海道の西部と北部で送電網の整備に取り組む。

 経済産業省は2014年度の予算でも同額の250億円を概算要求に盛り込んだ。再生可能エネルギーが豊富にある北海道や東北の送配電網を強化しつつ、発送電分離を見越して電力会社以外の送配電事業者を育成する狙いがある。

第3回:「電力会社の送配電網を利用しやすく」

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