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» 2015年03月31日 09時00分 UPDATE

蓄電・発電機器:太陽光発電の導入場所は増やせる、薄膜タイプの太陽電池を急斜面にも

太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入を積極的に推進する神奈川県が新たなプロジェクトを開始した。薄くて軽い薄膜タイプの太陽電池を使って、これまでパネルを設置しにくかった場所でも導入できることを示す狙いだ。鉄道沿線の急斜面など4カ所で有効性を実証する。

[石田雅也,スマートジャパン]

 首都圏は電力の需要が多いにもかかわらず、再生可能エネルギーを導入できる余地は限られる。神奈川県は県内で消費する電力の自給率を2010年度の10%から2020年度に25%へ高める計画を推進中で、特に太陽光発電に力を入れている。新たに薄膜タイプの太陽電池を県内の4カ所に設置して導入場所の拡大を図る。

 4カ所は従来の太陽光パネルでは設置しにくい場所を選んだ。1つ目は鉄道の線路沿いにある急斜面である。横浜市内の鉄道の駅に隣接する斜面に、薄膜タイプのシリコン太陽電池を設置した(図1)。設置面積は850平方メートルで、発電能力は20kWである。発電した電力は近くのトンネル内の電灯と駅構内の電気機器で消費する。

kanagawa_solar2_sj.jpg 図1 鉄道沿線の急斜面に設置した例。出典:神奈川県産業労働局

 鉄道の沿線には急な斜面が数多くあるが、用途がなく空き地になっているケースが大半だ。通常の太陽光パネルを設置するには大規模な造成工事と強固な架台が必要になるため、採算性の点で導入が難しい。

 神奈川県が採用した薄膜タイプのシリコン太陽電池は厚みが100分の1程度しかなく、防草機能のあるシートと一体化することもできる(図2)。設置費用は約4000万円かかったが、通常の導入方法と比べると2割ほど安い。さらに雑草を除去する費用も不要になる。

kanagawa_solar1_sj.jpg 図2 薄膜シリコン太陽電池の特徴。出典:神奈川県産業労働局

 2つ目の導入場所では、薄膜タイプの太陽電池に防水シートを一体化させた。海の近くにある地上11階建ての病院の屋上が対象で、風が強いうえに塩害対策が必要になる。540平方メートルのスペースに、発電能力が19kW分の太陽電池を設置した(図3)。設置費用は約3300万円で、発電設備と防水シートを別々に導入する場合と比べて1割程度は安くなる。発電した電力は病院内で消費する。

kanagawa_solar3_sj.jpg 図3 海に近い病院の屋上に設置した例。出典:神奈川県産業労働局

 同じ屋上でも工場でメガソーラーを可能にしたのが3つ目の事例だ。県南部の平塚市にある自動車生産工場の2つの建物の屋根に薄膜の太陽電池を設置した。この工場の屋根は波型のスレート屋根で、通常の太陽光パネルは重くて設置することが難しかった(図4)。架台も軽量のアルミ製を採用して、設置面積あたりの全体の重さを2分の1以下に抑えた。

kanagawa_solar4_sj.jpg 図4 工場の波型の屋根(スレート屋根)に設置した例。出典:神奈川県産業労働局

 2つの工場の屋根のほぼ全面を使って、6800平方メートルの広さに1MW(メガワット)の太陽電池を設置することができた。屋根に太陽電池を設置したことで遮熱効果があるため、工場の省エネにもつながる。設置費用は約3億6000万円で、発電した電力は全量を電力会社に売電する。

 薄膜タイプの太陽電池ならば窓に設置することもできる。県の施設ではロールスクリーンと一体化して遮光・遮熱効果を発揮する(図5)。内装工事だけで設置できるメリットもある。15階建てのビルの3つのフロアに、合計3kW分の太陽電池を導入することができた。各フロアの非常用の電源に利用する方針だ。設置費用は約1400万円かかり、コスト削減が今後の課題になる。

kanagawa_solar5_sj.jpg 図5 窓のロールカーテンと一体化して設置した例。出典:神奈川県産業労働局

 神奈川県は4カ所の事例を広く告知して、同様の場所に太陽光発電を導入する機運を高めていく。県の施設を除く3カ所の民間の施設に対しては、設置費用の3分の1を県が補助した。このほかにも発電事業者と土地所有者のマッチング事業や、中小企業が太陽光発電を導入する場合の融資制度も設けるなど、導入量の拡大策を実施中だ。

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