電力自由化は“バラ色の未来”をもたらすわけではない(前編):電力供給サービス(3/3 ページ)
一方で、再生可能エネルギーの普及に大きな影響を与える存在がファイナンスである。太陽光発電などを含む再生可能エネルギーは、大きな投資が必要となる一方で、現状ではまだ高コストであり、財政面での難しさがある。これらを支える仕組みとしてファンドなど資金調達の取り組みを組み合わせて展開を進めることが当然のものとなりつつある(図6)。デイビス氏は「電力事業者から金融事業者への転進を図る動きなども出ている」と述べている。
図6 エネルギーコスト(クリックで拡大)※出典:シーメンス
今後の見通しについてデイビス氏は「環境保護の流れでエネルギーシステムの流れを変えようという動きは後戻りできないものになりつつある。特にエネルギーシステムの転換速度については、ファイナンスモデルと政府の規制の動向次第で決まるといえる」と述べている。
さて、前編では日本の電力システム改革の前提でもあるグローバルのエネルギー産業の4つのトレンドについて紹介してきたが、後編ではこれらのトレンドを背景に、日本の電力システム改革がどのような課題を持っているかを説明する。
後編「電力自由化は“バラ色の未来”をもたらすわけではない(後編)」
- 停電少ないドイツ、再生エネでも品質維持
火力発電と比較したとき、再生可能エネルギーを利用した発電は不安定だと考えられている。大量導入したとき何が起こるのか。再生可能エネルギーの導入比率が日本の2倍以上に及ぶドイツの事例が参考になる。ドイツは2014年、停電時間の最短記録を達成した。
- 電力会社から小売事業者へ契約変更を促す、需要家の情報を共有できる新制度
2015年から始まる電力システムの改革に向けて、土台になる施策の検討が急ピッチで進んでいる。競争を促進するためには、電力会社が持つ需要家の情報を小売事業者も共有できるようにする必要がある。新設する中立の運営機関が全国8000万の需要家の情報を管理して提供する案が有力だ。
- 規制緩和で勝ち続けるために、先行する海外に学ぶ
3段階で進められる電力システム改革において、その第2段階である電力小売および発電の全面自由化、その後の発送電の分離が迫って来ている。それと並走してガスシステム改革の議論もあり、既存の電力会社やガス会社の垣根を越え、まさに公益業界は大きな変革の時を迎えている。このような市場環境に確実に対応して勝ち残っていくためには、どのような施策・取り組みが必要となるのか。規制緩和が先行する海外の動向や公益事業会社の事例を中心に4回にわたって解説していく。
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