よく耳にはするけれど、具体的に“Google AdWords”とはどういう広告プロダクトなのか。グーグルでGoogle AdWordsの基礎を学んできた。
先週ふらっと筆者(以下、H)のもとにやってきた先輩T。
T先輩 Hさん、“グーグル アドワーズ”って知ってるよね?
どうやら入社3年を過ぎた筆者を試しているようだ。
H はい。もちろん。テレビ番組ですよね! いろいろなアトラクションが出てくる。
本人はいたってまじめに答えつもりだ。
T先輩 ……。「DOORS」じゃなくて「AdWords」!
H え!? あれ、なんかの表彰ですか……?
T先輩 それ、Awardだって……。
あきれた先輩Tは筆者をグーグルへと送り込んだのだった。そしてGoogle AdWordsを理解するまで帰ってくるなとまで言い放った。
いまやGoogleのビジネスをけん引するという「Google AdWords」。Google AdWordsは、Googleでキーワードを検索すると、検索結果の上や横に広告が表示される仕組みだという。でも具体的にどんな広告事業なんだろうか……。
「AdWordsは試行錯誤を繰り返していって、かなり複雑になってきています。社員ですら、なかなか全体を把握しきれていませんから」と言うのは、製品開発本部長の徳生健太郎氏。2003年の入社当時、AdWordsのグローバル展開の担当プロダクトマネージャーを務めていたGoogle AdWordsのキーパーソンらしい。今回恐れ多くも、徳生氏からAdWordsの基礎を聞くことができた。
徳生氏はまず「Googleは、とにかくユーザーに集中して、製品を作っていけばあとはどうにかなるということから始まりました」と起点を語る。検索の技術、精度を高めてユーザーを獲得してから、ようやく広告事業がスタートしたのだそうだ。AdWordsは、最初の3〜4年は検索連動型製品として自社で公開。その後、検索の精度を生かして、連動型の製品をNetscapeやYahoo!といったパートナーに提供し、検索するユーザーに使ってもらうようになった。
「当初は自社サイトだけで検索の数を稼いだりとか、サイトに来る人に広告を表示させる商品しかありませんでした。パートナーに検索や広告を提供することで、広告主はますます増えるし、ユーザーにとっても信頼できるブランドが増えていく。拡大していくという意味でパートナーの存在は大きい」(徳生氏)
AdWordsを展開する上では北米だけでなく“国際化”を目指した。その時すでに検索エンジンは90何カ国語近くに翻訳化しようと動いていたところで、「『AdWordsのプロジェクトはなんでこんなに遅いんだ。とりあえずこの四半期でやれ!』という使命を与えられました。Googleは結構国際化された会社なので、その言語をしゃべられる人が、会社にはいるんですよ。1日で20カ国ぐらいの言語に対応できるようになってました(笑)」と徳生氏。
例外としてトルコ語を使える人は1人もいなかったそうだが、とりあえずトルコ語版を出してみると、「広告主の数が軒並み上がっている」という驚くべき結果が出たのだという。「言語のユーザーインタフェースを使うだけでもこんなに違うんだなと実感しました」(徳生氏)
言語だけではなく支払いシステムの構築にも注力した。「やはりお金をもらう商売ですから。ユーザーインタフェースの各国語だけではなくて、現地の貨幣で使えて、お金をとれるようなシステムを作っていくようにやってきました」(徳生氏)。広告主の中には、AdWordsのシステムのためにクレジットカードを作ったという人も少なくないのだそうだ。
クリック型広告のクリック単価が100円か200円の時代だったころ、Googleは大胆にも最低単価を“7円”に落とした。「特に広告代理店からは『勘弁してくださいよ』という声をいただきましたね。すそ野を広げるには、価格を下げて、価格の中で競争するしかないとわれわれは考えました」と徳生氏と当時の狙いを話す。
実際7円でやってみると、“はんこ屋さん”のような、バナー広告では出稿しなかったような広告主がたくさん出てきて、広告のトップと横が全部埋まった。大会社のようにお金を出さなくても、自分の持ち味で表現できる。「これが(大会社と)同じ土俵で勝負ができるんです」(徳生氏)
AdWordsでは、検索結果に連動させる広告出稿だけでなく、一般のWebサイトにも広告を出すことができる。広告を載せる側のサイトでは「AdSense」と呼んでいる広告商品がそうだ。当時、トップページ以外には広告を載せていないサイトも多く、多くのブログもそうだった。AdSenseは、そうしたサイトに受け入れられて広まっていった。「収益がモチベーションとなっていき、すそ野も広がっていくんです」と徳生氏は言う。
現在Google AdWordsの最低クリック単価は1円。実は広告の知識がなくてもすぐに始められると徳生氏は説明する。ということは筆者のようなも初心者でも、簡単に広告主になれるということか。
しかし、筆者の気軽な気持ちと裏腹に、徳生氏は慎重さを求めた。言葉を選び客を絞り込むことが重要で、絞らなければおのずとクリック単価も高くなってしまう。例えば「ペット」という単語をAdWordsに設定する場合、「ペット」だけを選ぶんでもターゲット層が広すぎる。ペットに「ショップ」や「ホテル」といった言葉を追加することで、どんどん客層を絞り込めるという。徳生氏いわく「ほしい客を絞る連想ゲームみたいなもの」なのだそうだ。なんだかちょっと楽しそうだ……。
Googleは、広告主に「ECの買い物カゴまで進んだ」「申し込んだ」などの目的で効果を見ることができるツールや、これだけのものを売るのに、どれくらい客を逃しているのかといった解析を行うツール「Google Analytics」なども提供している。ターゲティングのサポートやリポートの充実も図っているのだ。これは広告主としてはうれしいサービスだろう。
ここまで聞いて、Google AdWordsがGoogleのビジネスをけん引しているのもうなずけた。これでとりあえず会社に帰ることはできそうだ。
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