「○○に使って」で会社員の“出版リスク”を抑える樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

ビジネスパーソンが本を出版する場合、「あいつは仕事もしないくせに、本ばかり書いて」と言われるかもしれない。この“出版リスク”をどうやって抑えればいいだろうか。

» 2009年09月11日 21時30分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 初めて本を出版するということは、驚くべき体験だ。自分の書いたものが書店に並ぶのは、わくわくするような気分だし、読んだ人からの意見も貴重だ。

原稿は支店長から部長に、そして出版へ

 1984年、筆者はヨメサンとの共著で初めて本(『海外生活百科』)を出版した。もともと筆者がヨメサンに書くことを勧めた本だった。アフリカ・ナイジェリアとサウジアラビア・リヤドの合わせて12年を家族で駐在した経験から、「日本人家族のための海外生活ガイドブック」を書いてはどうか勧めたのだ。砂漠の真ん中で生活していたヨメサンの生きがいを作ろうとしたのである。

 子供の教育部分で筆者も記述することになったのだが、これがちょっと引っかかった。ヨメサンの単独出版なら、そのままどこかの出版社に送ればいいが、会社員である筆者の名前が入ると「これはちょっと待てよ」となる。当時のリヤド支店長に相談したら「本社に社内研修のために、この原稿を使ってほしい」と支店長が推薦文を書いてくれた。

 送られた先は、本社で社内文書を管理する部署。この原稿を読んだそこの部長は「こんな内容は、社外で出版すればよいのでは」というコメントを付けて、人事部長と広報室長に連絡してくれたのだ。この部長はその後、知り合いの出版社にわざわざ原稿を送ってくれた。そして、出版されたのである。当時、いわゆる“商社出版”が華やなりしころだったのもラッキーだった。大手の総合商社がたくさんの海外ノウハウ本を出していたのだ。

出版リスクを最低限に

 出版して売れれば、印税がそれなりに入る。しかし、途方もないベストセラーでない限り、出版で途方もなく収入があるというわけではない。

 とはいえ他人から見ると、本を出版するということは、大変な収入があると取られる傾向がある。だから、ビジネスパーソンは本を出版する前に、会社から事前に許可を取っておくことがよいだろう。社内で「あいつは仕事もしないくせに、本の出版ですごい収入がある」と言われるかもしれない。事実は異なっていても誤解を払しょくできないことがあり、その噂が社内を1人歩きすることもある。

 出版してみて、あらためて感じたが、筆者の会社である三井物産社風が非常に自由闊達(かったつ)だった。しかし、ほかの会社では、ここまで自由ではないかもしれない。もちろん筆者もきちんと事前許可を取得していたのがよかったのに違いはないが。

今回の教訓

 研修で使ってもらう、ぐらいの気持ちがいいのかも。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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