Aさん ……うん、こんな感じかな?
開米 おお! いいですね! これですこれ。すごくいいと思います。
Aさん この流れだったらプレゼンのときも説明しやすそうだなあ。
実際、Aさんが言うようにこのパターンはプレゼンテーションでよく使われます。
こんな背景のもとに、困った問題が起きてます。そうですよね? それがこんなふうに(理想)なったらいいと思いませんか。そうですよね? そのために私たちはこんなソリューションを用意しました!
というトークをしやすいためです。ただし、実際に対面プレゼンの場でプロジェクター投影用に使う場合は文字数を3分の1ぐらいに減らす方が望ましいです。
ちなみにこのトークの中に「そうですよね?」という問いかけが2回あることに注意してください。プレゼンの途中に聞き手とのインタラクションを挟むのは効果的なテクニックです。「解決策」という自己アピールの前に「問題」と「理想」の2ステップで「聞き手の状態」を確認することで、聞き手にとっては
「こちらに気を配ってくれて、ニーズをきちんと聞いてくれそうな人だな」
という印象を与えることができます。逆にプレゼンをする側にとっても、インタラクションを挟むことでトークが単調にならず、反応を確かめながら話を進められるメリットがあります。
「背景・問題・理想・解決策」というパターンは、そんなわけで何らかの新商品・サービスを説明するときに広く使える手法なのです。文書を作って渡す場合も、プレゼンテーションをする場合も共通に使えるので、ぜひ参考にしてください。
今回紹介した事例はAさんの相談から始まりましたが、開米は「背景・問題・理想・解決策」パターンというちょっとしたヒントを言っただけで、具体的にどう書けと文案まで作ったわけではありません。
実はこういうケースはよくあるんです。
――どう書けばいいのか散々悩んだけれど、ちょっとしたヒントを聞いたらあとは自分で簡単にできてしまった
という例ですね。でもその「ちょっとしたヒント」に気が付くのが意外に難しい。だから私のような文書化能力向上コンサルタントの出番があるのですが(笑)。
今回は技術者であるAさんの「背景〜解決策」パターンを紹介しましたが、これに限らず、ビジネスパーソンの実務によく出てくるパターンは他にも多数あります。この連載ではそうした「よく出てくる、実務現場で役に立つ」ヒントをどんどん紹介していく予定です。ぜひご利用ください。
また、Aさんのようなご相談も歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」という例文があれば遠慮無く開米へお送りください。ご相談受付用メールアドレスは ask@ideacraft.jp(@を小文字に変換してください)です。今回のような連載での紹介は許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで取り上げますので心配ご無用です。
なお、当記事についてのご意見ご感想ご質問等は「twitter:@kaimai_mizuhiro」宛でも受け付けております。中には記事では書ききれない情報もあります。物足りなく思った時はぜひ@kaimai_mizuhiro宛に質問を飛ばしてみてください。
それでは「説明文書の書き方相談室」、本日ただいまこの時をもってスタートです!
著者・開米瑞浩氏が講師となって「アイデア・思考を見える化」をテーマとするセミナーを開催します。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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