クリエイティビティあふれる「すごいアイデア」を思いつくことも問題を内包している。というのもすごいアイデアというものは前例がないからだ。自然と不確実性が高まり、売上高などの数値での取り扱いが難しくなる。引いてはマネジメントの問題に突き当たるわけだ。
「ちょっと構造的な(理屈っぽい)人と、直観的に考える人が多いのが会社組織です。管理者層は構造的で、クリエイティブは直観型。そのため、マネジメント層とクリエイティブ層がかみ合いません」。不確実性が上がったとき、それを組織の中でどう受け止めるか。
コクヨファニチャーの黒田英邦社長も悩んでいる。「例えば去年、販売部門と製造部門を統合しました。すると、部門ごとの壁がなかなか乗り越えられないんです。部門を超えると“言葉”が通じないといようですね。現場の人たちチャレンジを楽しめるようにするには、どう人を動かしていけばよいのか……」
一方、濱口氏は「不確実性の高い中でさまざまな部署の中を突き進むことは難しく、さらにその先にいるユーザーへ受け止めてもらうのも難しいでしょう」と応じる。「イノベーションそのものだけでなく、社内をどう突き進むか。あるいはユーザーにどう受け止めてもらうかが必要になります。社内には“壁”がたくさんあるので、いろいろな場面で論理性が求められるでしょう。論理性はモデルを描くことで高まります。アイデアと論理性を組み合わせると、社内を突き進める可能性は高くなるはずでが、それでも突破できないなら、あとはパッションですね」
問題は、どうやって面白いアイデアやイノベーションを組織内でマネジメントするかだ。「プロセスは関係ありません。何か1個、イノベーティブなものが1億円でも売れたという事実を作れば全て解決します。実は人間はロジックでいくら訴えても動きません。もともとアイデアやイノベーションは不確実性を持っていますので、いくらプロセスやロジックがすごいといっても8割はすぐに忘れてしまうんです。求められるのは“事実”です」
事実――つまり「1億円売れた」というような事実である。アイデアが生まれたら、とにかく実現する方法をあの手この手で考え、既成事実を作ってしまおう。「(それができれば)どんどん回ります。だから、誰かが社内で作らなければいけない。100メートルを10秒切ることができなかったのに、1人が切れたら『あ、切れるんだ』と言って9秒台で走る人がどんどん出てきたのと同じですよ」
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