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» 2013年08月07日 11時00分 公開

考えている“フリ”が重要あなたの話の9割は相手に伝わっていません(3/3 ページ)

[松本幸夫,Business Media 誠]
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伝えるためには「話さない技術」も大切

book 『あなたの話の9割は相手に伝わっていません』(アスコム)

 ラジオ時代に話術の名手といわれたのが、徳川夢声である。夢声を有名にしたのは、ラジオ番組で吉川英治の『宮本武蔵』を朗読したことであった。彼は、話で一番大切なのは「間」であるとして、いたずらに話術、雄弁術に走りがちな人たちに警鐘を鳴らした。

 ラジオは、テレビと違って映像がない。だから、ラジオで「間」をとるというのは名人芸、プロ中のプロにしかできないことだ。なぜなら、ラジオで「間」をとって何もしゃべらないでいると、すぐに他の局に変えられてしまうからだ。そんな状況のなかで、徳川夢声はギリギリまで「話さない」という間の力を用いて、聴取者の心をつかんだのである。

 「伝わる話ができる人」になろうとすると、どうしても「話す技術」にばかり目を向けがちである。しかし本当に大切なのは「話さない技術」ということだ。

 絵を描くことも同じ。話すときの間は、絵の描写でいえば無地に該当する。キャンバスに絵を描くときは、もちろん絵そのものがなければ絵にはならない。しかし、キャンバスの無地がなくては絵が描けないし、絵も映えることはない。

 先述したように、あえて何も言わないという時間をとることによって、聴く集中力を高めさせられるのである。

 間をとるのは、なにも答えに困ったときばかりではない。伝わる話ができる人と思ってもらうために、次の5つのケースでは、極力間をとって話すようにしよう。

1.話を始める前

 「この前さあ」「ねえ聞いてよ」などといきなり話し始めると、あまり賢いという印象にはならない。

 「落ち着いている」「熟考している」という印象は、話を始める前にほんの1、2秒の間をとることで作ることができる。

 これは、ビジネスでもプライベートでも同じである。ほんのわずかの間によって「この人は何を話すのかな」というように、相手の集中や期待を高めることができる。この方法は特に、多人数を相手に「あがりそうだ」というときにも有効である。いきなりワーッとしゃべり始めてしまうと早口になり、あがりは増してしまう。

 そこで、深呼吸する間ぐらい「黙る」、そしてゆっくりと話し始めると、だいぶ落ち着きも増す。

2.自分の話が興に乗ってきたとき

 話が「聞きとりにくい」人というのは、一般的には「早口」が原因のことが多い、と思われている。

 しかし、私がスピーチやプレゼンの指導をしていて、「話の早さ」そのものが「聞きとりにくい」原因になっているということはまずない。

 むしろ、ある程度テンポよくスピーディーに話したほうが聞いていて退屈せず、長時間の話でも短時間に感じさせることができる。あまりゆっくり話してしまうと間延びするし、聴いている人の中には寝てしまう人もいるだろう。

 ただ、注意したいのは「話に間がなくなる」ことである。次から次へと休みなく話すと「間がない」ので相手は疲れてしまう。これは、頭がいいとか悪い以前の問題である。特に、どんな人も自分の話に面白さを感じて夢中になり、熱心に話していると間がなくなりやすい。こんなときこそ、ちょっと小休止、あえて何秒間か休んでみることだ。

3.話を終える直前

 あがり体質の人は、人前で話をしていても心の奥底では「早くこのつらい状態から逃れたい」ということがあるので、そそくさと尻切れトンボのように終わりがちだ。「えっ、これで終わり!?」と聴衆が感じるほど、サッと終わってしまってはよくない。

 堂々と話を締めるのは、すぐにできる。それは終わりの言葉の前に、しっかりと間をとることだ。

 「ご協力お願いします」のあとに数秒の間をとる。そして、そのあとに「ご静聴ありがとうございました」とはっきり言えば、拍手も大きいものだ。

4.強調することを言う直前

 一般には、何か強調したいときには大きな声を出すのは1つのやり方だ。確かにそこを大きな声で言えば強調することはできる。ただ、話のメリハリからいくと、ただ大きな声を出すだけというのはまだアマチュアのやり方である。

 プロは、つまり「頭がいい」「スマート」などと思われる話し方ができる人は、ほかのやり方もする。大体いつも大きな声ばかりでは、話すのも疲れてしまうだろう。プロは、大切なことを言う直前にしっかりと間をとる。

 「人間関係で大切なことは……、相手の立場に立つことです!」と大きな声を出すのはひとつのやり方だが、「人間関係で大切なことは」で間を十分にとって「相手の立場に立つことです」と言う。間をとって読むだけでその効果のほどは分かるだろう。

5.質問を投げかけたあと

 多人数でも1人であっても、相手に質問した直後は黙って間をとってみよう。相手に考えさせる時間を与えるというのは、コミュニケーションそのものにとっても大切なことである。

 「どう思いますか?」
 「いかがでしょうか?」

 と言ったあとに、静かに相手の言葉を待つのである。さらに高等テクニックとしては、質問したあとに間をとる。そして、そのあとに自分で答えを言ってしまう。自問自答方式、いわゆるレトリック質問である。

 「人前に立って、まずすることは何でしょうか?」(質問)
 ──間をとる──
 「そうです。スマイルですね」(自分で答える)

 アマチュアは質問をしたあとでも話のはじめでも、すぐにペラペラと話してしまうために、話に「味」が出てこない。あの人の話は「心がこもっている」「ハートで話す」、さらには「頭がいい」という評価は、間のとり方をうまくすることで得られる。

ポイント

  • 考えているように見せれば、話をより聞いてもらえる。
  • ライバル、競合他社はけなさない。さらりと褒めて、すぐに話題を移す。
  • 間をとって話す。


(次回は、「話を分かりやすくするために数字を入れる」について)

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