30歳過ぎまでさえなかった、「あまちゃん」ディレクターの仕事術発想をカタチにする技術(2/2 ページ)

» 2014年01月23日 12時00分 公開
[吉田照幸,Business Media 誠]
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努力するより、試せ

 イチロー選手は、毎年フォームを変える。王選手もそうしていたそうです。あれだけ個性的なスイングをしている人なら、1つの理想を極めようとしているように見えますが、実際には毎年あれこれ違うフォームを試しているわけです。あんなすごい人達が、毎年自分を変えている。なのに、なぜ、ぼくら普通の人が自分の従来のやり方に固執するのでしょう。逆にいえば、自分をどんどん試して変えられる人が、その道で何かをなしとげる人といえるのではないかと思います。

 だから、努力するより「試す」んです。

 「上司に、この企画のどこがおもしろいの? って言われるだろうな」

 「おもしろいと思っているのは、自分だけかもしれないな」

 「こんなことしたら、おかしいと思われるかも」

 そういう気持ちは、すごくわかります。でも、自分から離れていれば大丈夫。失敗しても次のゲームがある。そもそも失敗なんてないんです。失敗が増えるたびに成功の確率が上がっているのですから。なぜ成功したのかは見えづらいけれど、失敗の原因は見定めやすい。だから失敗は成功の母なんです。

 NEOではパロディをいっぱいやりました。「世界の社食から」や「テレビサラリーマン体操」は特にウケました。しかし、イマイチうまくいかなかったものもあります。「プロフェッショナル仕事の流儀」のパロディで「サラリーマン遊びの流儀」というものです。

 タイトル通り、あのテイストでサラリーマンの趣味をドキュメントで追う企画。しかしどうにも転ばない、おもしろくならない(これ、問題点です)。なぜかと考え、気づきました。そもそも「プロフェッショナル」自体が働く人を主人公にした番組なのだから、内容が仕事から遊びに変わっただけで、パロディになってない。パロディって形だけ真似ても、入り口だけおもしろくて、内容が発展しないんです。芸人さんでいえば、出落ちの人って感じです。

 そこで学びました。パロディをやるときは、全然関係のない分野にうまいことサラリーマンネタを仕込むと、視聴者は魅きつけられる。その失敗を糧にしたのが、僕の中でも究極の企画「ゆく年くる年」のパロディ「ゆくNEOくるNEO」です。年末の特番で放送しました。オリジナルの厳粛な年末の雰囲気をロケで完全再現。

 当時食品の偽装表示が問題になっていました。その関係者達が反省しに集まるお寺、その名も……、「偽装表寺(ぎそうひょうじ)」。ブラックユーモア満載。最高でした。他にも超地味なNHKのニュース解説番組「明日を読む」をパロディにした「コントを読む」や、オリンピックのパロディ「サラリンピック」、「今でしょう」が流行る2年も前に作った、東進ハイスクールのCMのパロディ「サラリーマン予備校のCM」など、見た人が忘れられない企画がNEOからは、生まれました。

 すべては試すことからはじまります。考えていても何もはじまりません。そのためには、自分から離れているとやりやすいです。こだわりや、今までの慣習にとらわれず、「これ!」と思ったことをどんどん試せます。

 仕事が楽しくない人、企画が通らないと嘆いている人、せっかく企画を通したのに思ったように進められない人、自分の個性が活かされない、上司が分かってくれないと不満を抱えている人。ちょっと視点を変えて自分から離れてみると、解決策が見えてきます。

 本連載では、今までの自分の経験から、企画やアイデアの作り方、特に、新しいアイデアを、いかに多くの人に受け入れてもらうか、について書いてみました。企画だけでなく、「自分は理解されてない!」と思っている人にも役立てていただけると思います。

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