――将来的には人工衛星の需要はどのくらい見込まれるのでしょうか。
世界的にみると、今後10年間で1万5000から2万機とも予想されています。この中から軍事用などを差し引いて、年間で換算すると、数百機になるのではないでしょうか。日本でも年間にすると、数十回の打ち上げ需要があると思います。
大型のH-2Aロケットは年3回ほどしか打ち上げられませんでした。ただ小型ロケットを使って打ち上げれば、好きなタイミングで、安く、しかも狙ったところに衛星を置けるようになります。そうなれば新しい需要がいくつも生まれ、われわれのビジネスチャンスが広がると考えています。
――そうなると投資家がその衛星を買うようになるかもしれないですね。
米国の投資会社JPモルガンは、既に人工衛星のデータを購入し、活用しています。石油備蓄基地を宇宙の上空から観察していれば、備蓄量の増減を把握することができるため、最新のエネルギー情勢をリアルタイムでつかむことができます。これを基に先物相場に投資することもできるからです。
――JPモルガンはかつて南北戦争の時代に、南軍と北軍のどちらが優勢かを、モールス信号を使って戦場から伝達し、これをもとに株式投資をして富を築いたという実績があります。今度は衛星を使うことによって、上空から企業の情報をつかもうとしているのかもしれません。
現に米国の大手スーパー、ウォルマートは衛星を使って情報を収集しているようです。これからは1社に1台の人工衛星を持つ時代が来るかもしれません。
――そうなると、「衛星の情報は誰のものか」という議論になるかもしれませんね。
以上がインターステラ稲川社長のトークイベントの内容だ。MOMO3号機打ち上げの際の動画を制作したNoMaps実行委員会の小島健太郎さんは、インターステラが積み上げてきた並々ならぬ努力と奮闘ぶりを教えてくれた。
「インターステラの皆さんは2号機の打ち上げが成功しなかったときも、次号機に向けてトラブルの原因を徹底的に究明するため、現場で飛び散ったロケットの破片や細かな部品を全て拾い集めていました。成功を目指して綿密な作業を全員で突き詰める前向きな姿勢から、私たち北海道民が学ぶものは非常に多く、地元の人々にも大きな希望を与えている」(小島さん)
インターステラは7月13日に観測ロケット「MOMO4号機」を打ち上げる。この打ち上げが成功するかどうかが事実上、商業化への道筋を示すものとなり、まさに「次の正念場」となる。現在、「みんなの力で宇宙から夢の折り紙飛行機を飛ばそう!」との標語のもと、クラウドファンディングを実施していて、7月10日まで受け付けている。5月に多くの人々に与えた「感動」が再び蘇り、「商業化」への道筋を示せるか。目が離せない。
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