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コロナ禍でも不文律破らず 「シウマイ弁当」崎陽軒が堅持するローカルブランド新連載・地域経済の底力(5/5 ページ)

» 2021年06月04日 17時06分 公開
[伏見学ITmedia]
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世界に羽ばたくローカルブランドに

 崎陽軒は今後、シウマイという横浜のブランドを海外に発信していくことに力を入れる。その足掛かりとして昨年8月、台湾・台北駅に出店した。初の海外進出である。

 「現地での売り上げに加えて、日本におけるインバウンド需要を喚起することが目的です。台湾で崎陽軒のシウマイの認知度を高め、台湾の人たちが日本に来たときにうちの商品を買ってもらいたい」

台北中央駅(写真提供:ゲッティイメージズ)

 海外展開は以前から構想しており、野並社長の悲願だった。ローカルに根ざすと言いながら、グローバル展開とは矛盾しているのではと思うかもしれない。「ローカルブランドだからこそ、世界でも通用するのです」と野並社長は断言する。

 こうした考えに至ったのは、かつて大分県知事を務めていた平松守彦氏の教えによるものだという。平松氏は1980年から地域活性化プロジェクトとして、「一村一品運動」を展開。大分の各市町村において特産品作りを奨励した。この運動の基本理念が「真にローカルなものがインターナショナルになり得る」という発想だった。

 典型的な例が、アルゼンチン・タンゴである。ブエノスアイレスの片田舎の民族舞踊でしかなかったものが、今では世界中の人たちが楽しむ音楽になった。当時、平松氏から直接この話を聞いた野並社長は、「崎陽軒は真にローカルなブランドを目指していこう」と心に誓った。

 「本当においしい食べ物であれば、世界中の人が食べてくれるはずです。ローカルブランドだからといって、海外に出ないのではなく、チャレンジしていきたい」

 横浜のシウマイを世界へ——。いつの日か、海外からシウマイを買い求めて横浜にやって来た外国人観光客が、笑顔でシウマイに舌鼓を打つ光景を目にしたい。そんな日を夢見て、崎陽軒の挑戦は続いていく。

著者プロフィール

伏見学(ふしみ まなぶ)

フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。


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