――他にサッカー関連でこれは変わっていく、という動きはありますか。
スタジアムですね。今言ったように、楽しみ方が変わっていくであろう中で、スタジアムだけはコンクリートで作ってしまったから変えられない、というのでは、時代の変化に対応していけません。
そもそも、コンクリートで豪華な外装のスタジアムを作っても、時とともに朽ちていきますよね。それなら中身に注力して、朽ちていくのではなく、変化していくスタジアムを作りたいな、と。それでうちは緑豊かになっていく「里山スタジアム」というものを構想しています。
――里山(さとやま)スタジアムですか。どんなものなのでしょうか。
365日、試合がない日も人が行き交うような施設・コミュニティーのようなものを目指しています。もう、スポーツの試合を見に来るだけのハコモノとしてのスタジアムを作っている時代じゃないんですよね。最近では大分緩和されてきたものの、もともと日本のスタジアムは公園の中にあるので、「公園法」という法律によって、スタジアムの中にレストランやショッピングモールを入れる欧州のような複合型はできないんです。
でも今回われわれがスタジアムを建てる予定のところでは、公園法に引っかからない土地なので複合型ができたのです。
里山スタジアムの中身に関しては、いろいろ考えてはいますが……例えば、地域で取れたものや持ち寄ったものでフードバンクを作ります。それで今治のレストランのオーナーに月1回ボランティアで来てもらって、誰もが来ておいしいものを安く、子ども食堂のように食べられる場所を作りたいと思っています。
精神的に疲弊している人も、このスタジアムに来たら人間性を取り戻して帰っていくような場所になったらいいなと思って、今年はその資金となる40億円を必死に集めてきました。コロナのときにそんな資金調達なんかして、とも言われたけど、もうほぼ集まりました。おそらく、みなさんがその必要性を感じてくれたんだと思います。
――そういったお金の集まり方など、周囲の反応からも時代の変化を感じられますか。
「衣食足りて礼節を知る」と言いますが、松下幸之助さんの時代は、貧困をなくさないと世の中はよくならない、そのためにビジネスをして社会を変えていこうとする時代だったのだと思います。でも、今はある程度、物質的に豊かに“なっちゃった”時代です。そうするとこれからは、物質的な豊かさではなく、文化とか心の豊かさを上げていく社会に必ずなっていきます。
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