アジアゾウの「象主」になれる権利を30万円で販売 JR東海の担当者に聞いた「意外な狙い」「推しエコノミー」に商機見いだす(2/3 ページ)

» 2021年11月13日 05時00分 公開
[今野大一ITmedia]

「ずらし旅」に続く「推し旅アップデート」

 11月1日に同社は「推し旅アップデート」というキャンペーンを立ち上げた。象主のプランはその目玉コンテンツの一つだ。新型コロナウイルスの感染が拡大した後、「ずらし旅」キャンペーンを立ち上げていて、今回はそれに続く形となる。

 この狙いについてJR東海営業本部・福井一貴氏は以下のように説明する。

 「コロナ禍の現在、多くのイベントが中止となり、ご自身の『推し』のアーティストやスポーツチームなどに接するリアルな体験が、なかなかできない状況が続いています。

 そこで、お一人お一人がご自身の『推し』に会いに行く『推し旅』を、エンターテインメントや観光など各業界の方々にご協力いただいて内容をアップデートし、もっと楽しいものにしていきたいという思いを込めて『推し旅アップデート』という名称でキャンペーンを展開することにしました」

 「推し旅アップデート」をリリースした際、「象主」の他、人気アイドルグループ「7OREDER」の安心安全イベントも発表した(11月4日に申し込みは締切られている)。こちらは「安心安全」を謳(うた)うだけあり、ワクチン接種証明と、抗原検査陰性判定を参加条件としている。

 特別公演イベントの前日からホテル宿泊、イベント当日は貸切新幹線・貸切バスでの移動、イベント後も参加者の体調確認を実施するなど、感染症対策を徹底したイベントに「アップデート」したという。

 また、江戸時代に醸造が途絶えた幻の酒「江川酒」を提供するプランも発表した。江川酒は、北条早雲が名付け、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康も味わった酒で、有名な「醍醐の花見」でも振る舞われた。江戸時代に醸造が途絶えたものの、20年5月に当時の醸造方法について記した「御手製酒之法書」が発見され、今年は約320年ぶりに少量が再現生産されたという。

 「江川酒を単に飲み、学ぶだけでなく、来年度は酒米づくりから醸造にまで関われるプランを造成する予定」(JR東海営業本部・小池奏里氏)だという。酒好きが酒を飲むだけで終わらないよう「アップデート」したかたちだ。

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康も味わった幻の酒・江川酒

 象主の企画も象好きが象を見るだけでなく、飼育体験や野生の象の危機的状況について学ぶなど、「アップデート」されている。今後も「推し」コンテンツを追加していくというが、このキャンペーンの真の狙いは意外なところにあった。

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