この数年、テレビなど家電分野に積極的に進出するなど事業を急拡大してきたアイリスオーヤマ。2021年後半から足元を固める安定成長に方向転換しようとしている。コロナ禍の影響などにより、部品の調達が当初予定した通りにいかなくなっていることなどが要因のようだ。
22年以降の事業展開についてアイリスオーヤマの大山晃弘社長に聞いた。
大山 晃弘(おおやま・あきひろ)2003年アイリスオーヤマ米国法人に入社、10年アイリスオーヤマ入社、グローバル開発部部長、執行役員ホーム開発部部長を経て、15年取締役。18年7月に3代目となる社長に就任。43歳。宮城県出身(撮影:河嶌太郎)――コロナ禍にもかかわらず、2020年の業績は好調で、21年も順調でした。今後の見通しは。
アイリスオーヤマ単体の売り上げは、20年が30%伸び、21年も2桁で増加するとみています。ただ、会社も大きくなり、少しひずみもでてきています。21年上半期は順調に伸びましたが、下半期は状況が変わってきています。円安、資源高、中国のサプライチェーン(部品調達網)の大混乱などにより、しばらくは安定成長に方向転換しようと戦略を変えました。いまその見直しの22年の計画を作っています。
このため、22年にアイリスグループ全体の売り上げ目標1兆円の達成は慎重に予測しています。何が何でもこの目標を実現ということではなく、周囲の状況に合わせた質的な成長をしていきたいと思います。
――21年のヒット商品を3つ挙げるとしたら何でしょうか。
1番目はマスクです。国内では月に1億5000万枚生産していて、枚数では最大だと思います。このほか、中国、韓国、米国、フランスでも生産し、海外では月の生産量が5億枚を超えていて、利益も出ています。コロナ禍の前はプライベートブランドとして提供していましたが、コロナでアイリスブランドの印象が強まりました。
2番目はサーキュレーター(送風機)です。コロナ禍で部屋の換気をするためのもので、個人を中心によく売れました。
3番目はカーペットなどの掃除が簡単にできるリンサークリーナーがYouTubeで配信されたことをきっかけにヒットしました。
――アイリスというと、新商品を発表する前のプレゼン会議が有名ですが、今後もこのやり方は続けますか。変化の速い今の時代ですが、この方式で良いのでしょうか。提案された商品の中で、「没」になるのと、ゴーサインが出るものとの一番の違いは何ですか。
プレゼン会議で私が重視しているポイントは、まずは適正価格から外れていないことです。次がその商品の機能が理解できてイメージがわく商品かどうか。3番目にお客さまにとって機能を絞ったシンプルな商品であることです。
私のフィルター(選別基準)はそれほど厳しくはなくて、プレゼン会議でゴーサインが出る比率は6割くらいです。1回でOKを得られるものは少なく、アイデア段階で差し戻し、再提出してもらいます。それでもう一度チャレンジするなど、会議に3回出してようやく「合格」という商品もあります。
新商品の出し方としては、プレゼン会議でOKの出た商品をまずは小ロットで作って出してみて、売れたらスピーディに増産をかけます。このやり方は続ける方針で、年間千アイテムの新商品を出しています。
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