――超小型EVのサービス開始を22年から開始すると発表しています。その狙いは何ですか。
2021年に設立した「出光タジマEV」は、元レーサーでこれまで多くのモビリティ開発を手掛けてきた田嶋伸博氏が創業したタジマモーターコーポレーションの車両設計の技術と、出光のSS(サービスステーション)ネットワークのインフラなどを融合したモビリティやモビリティサービスを全国で提供できる強みがあります。
移動についての潜在的ニーズは多岐にわたりますが、それらのニーズに応えるべく、新しいカテゴリーのモビリティを提供しようと、田嶋会長と意気投合しました。
出光タジマEVが開発する超小型EVは4人乗りで、家庭用コンセントで夜間に充電しておけば、スピードは時速60キロまでですが、走行距離は120キロまで走れるので地域の足として使えます。衝突試験などをクリアし型式認証を取得することで、お客さまに安心してお乗りいただける車両を提供する予定です。車両は販売ではなく、サービスステーションを起点に、シェアリング、サブスクのような形で使うサービスを想定しています。
新型車両の上市を前に、当社は岐阜県や千葉県などでタジマモーターコーポレーションの既存車両を用いたカーシェアリングの実証運用や、北海道の苫小牧にある当社北海道製油所の構内車としての実証導入をしていて、シェアリングでは、地元金融機関の営業車などといったニーズを確認しています。
車両開発の計画を発表してから予想以上に反応があり、生産が追いつかないほどのお声がけや反響がありました。また、サービスステーションを経営する特約販売店からも欲しいという強い要望をいただいいています。
――石炭については、逆風が吹いています。どんなスタンスで臨みますか。
多いときはオーストラリアで4つの鉱山で生産してきました。ボガブライ鉱山は当社のほかに日本の中国電力、日本製鉄がそれぞれ10%ずつ権益を取得していて、電力会社や鉄鋼会社に必要な石炭を提供しています。石炭が必要とされるうちは、適切な量の供給はしつつも、新規の開発はしない方針です。
一方で、石炭の代替となるカーボンニュートラル燃料として、ベトナムでブラックペレットと呼ばれる木炭のようなバイオマス燃料の商業プラント(年間12万トン)を建設し、22年上期に稼働を始める予定です。「出光グリーンエナジーペレット」と名付けましたが、これを石炭と混ぜて燃やせば二酸化炭素排出をLNG(液化天然ガス)と同じ程度まで低減できます。
石炭との混焼は、既存設備で可能なので石炭火力からの過渡期の対応策として有効なものになります。将来的に、全てブラックペレットで発電所のボイラーを回すことができるようになれば、二酸化炭素の排出を大幅に低減することができます。
一番問題なのはコストです。このペレットはトン当たり200ドルとかなり高いのです。しかし、今は石炭価格も急騰して以前の同60〜70ドルよりもだいぶ高い水準となっています。コストを下げて量産化できれば、有望な再生可能エネルギー源になる可能性があります。
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