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出光興産・木藤俊一社長に聞くガソリンスタンドの展望 脳ドックから飲食店まで地域の「よろずや」に元売りとしてサポート(3/4 ページ)

» 2022年02月01日 05時00分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

買収の基準は「従業員が活躍できる事業かどうか」

――カーボンニュートラルに向けての取り組みはどうですか。

 50年までにカーボンニュートラルを達成する目標を立てていますが、既存技術だけでこの目標を達成するのは難しいと思います。達成には技術革新のための時間が必要です。

 いまは化石燃料をはじめとする既存エネルギーへの風当たりが強すぎることで、石油精製設備に対してメンテナンス費用をかけづらい状況になっています。既存エネルギーの設備改造で資金を融資してもらおうと思っても融資や保険が付かない動きがあり、どうしても投資がしづらい状況です。

 その一方でエネルギーの安定供給は不可欠です。安定供給を使命とする当社にとって、この現実は悩ましいところです。

――業界トップのエネオスが2000億円で再生可能エネルギーを手掛ける企業を買収しました。出光も買収(M&A)資金1000億円を用意しているようですが、どう使いますか。

 新しい事業をするにはある程度の時間をかけるべきで、われわれは会社を丸ごと買って数字が上がればよいとは考えていません。ファンドではないので、社員が介在して社員自身が成長できるチャンスがあるかどうかを見極めたいと思います。

 M&Aの資金は用意していますが、一度に1000億円を投資することはしません。よって、高くてもせいぜい数十億円の規模となると思いますが、出資規模ではなく従業員が活躍できる事業かどうかという視点で投資をします。

――地熱発電にも以前から取り組まれています。今後の展開は。

 25年も前から大分県の九重町で2万7500キロワットの地熱発電所への蒸気提供を開始し、地熱事業に参入しています。来春には秋田県湯沢市小安地区で新しい地熱発電所の起工式を開催する予定です。しかし、環境問題対応などのため建設工事に着手するまでのリードタイムが10年も掛かるのは長すぎます。

 規制緩和が進んでいるとはいえ経済合理性から見て極めて厳しい状況です。日本では地熱は豊富だといわれてはいますが、20カ所全部集めても50数万キロワットしかありません。日本にポテンシャルのある地熱資源ではありますが、多くの企業が積極的に投資するのは、現状の規制下ではまだまだ難しいと思います。

出光大分地熱株式会社 滝上事業所

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