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DXで飛躍する出光興産・木藤俊一社長を直撃 「昭和シェルとの経営統合」の効果は?ブリヂストンからキーマンを招へい(1/4 ページ)

» 2022年01月31日 10時08分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

 石油元売り大手の出光興産が、昭和シェル石油との経営統合によるシナジー効果とDXによって、脱炭素が求められる新時代で飛躍しようとしている。DX銘柄にも選定された。

 出光興産の木藤俊一社長に新しいエネルギー時代に求められる将来像を聞く。

木藤俊一(きとう・しゅんいち)1980年に年出光興産入社。営業畑が長く、99年販売部企画課長、2005年人事部次長、14年常務取締役、17年副社長を経て18年に社長就任。65歳。神奈川県出身(撮影:河嶌太郎)

ブリヂストンCDOを招へい

――出光興産のDX推進は外部から招へいしたキーマンの役割が大きかったようですね。

 19年4月に出光興産と昭和シェルが経営統合して、この2年半あまりシステム統合が一大事業になっていました。いままさに、その仕上げの段階です。これを担当したのが数百人の大部隊の情報システム部でした。加えて、デジタル改革には情報システム部とは別の新しい組織が必要だと判断して、20年1月にデジタル変革室をスタートさせたのです。

 そのトップにブリヂストンCDO(チーフデジタルオフィサー)だった三枝幸夫氏に、執行役員兼デジタル変革室長(当時)として来てもらいました。デジタル改革に対して、従来の情報システムとは違った視点で取り組んでもらいましたが、推進できたのは彼のリーダーシップが大きかったと思います。

 外部から「宇宙人」が来たようなイメージを持たれないか、うまく融合できず、デジタル変革室が特殊な集団にならないかという心配がありました。彼ともよく話し合い、そうならないようDXを推進しました。

――三枝氏はどのようなDXを打ち出したのでしょうか。

 3つの切り口を提案してくれました。1つ目は、「Digital for Idemitsu」で、デジタルを活用して業務内容を効率化するというものです。例えば、大規模な石油精製、石油化学プラントのある千葉事業所にデジタル変革室(当時)のメンバーを常駐させ、製造部門におけるDXを進めました。

 最初は現場の戸惑いもありました。ですが、現場に入り込んで事業所のメンバーと対話を重ねたことで、信頼を得られるようになりました。

 2つ目が「Digital for Customer」です。厳しい経営環境の中で長年事業を続けているサービスステーション(ガソリンスタンド)は、必ずしも燃料を多く販売しているだけではありません。車検や介護事業などその地域のニーズに適合した多角的な販売活動をしているところが残っています。こうしたことから、全国に約6300カ所あるサービスステーションのネットワーク全体を、デジタルによってさらに進化させ、地域のニーズに合った「よろずや」に変革するためのメニュー提案が主です。

 3つ目が「Digital for Ecosystem」で、地域・他社と連携して新しい価値を創出していくためのデジタル活用です。彼はこうした改革提案とその実行スケジュールを、就任してから3カ月ほどで現場を見ながら構想しました。実際にタイムラインを引いてくれたので、これで行こうとなりました。

 「DX銘柄」に選定されたのは、エネルギーという大きな産業基盤の中で、こうした改革への取り組みが評価されたのではないかと思います。

スマートよろずやのコンセプト画像(出光興産提供)
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