――『スタグフレーションの時代』では、経済的な理由で結婚できない若者が増えている問題を指摘していました。結婚したくない若者は本当に増えているのでしょうか?
よく、少子化についての専門家の解説で、若者の結婚に対する価値観やライフスタイルが変わってきていると指摘するものがあります。
実は各種調査データを見ていると、「結婚した場合に欲しい子どもの数」や「実際に結婚した夫婦が産む子どもの数」はここ30年くらい、ほとんど変わっていません。さまざまな書籍を調べると、日本人は諸外国に比べて未来を予測する国民性で、子どもができてから考える、という人は少ないらしいのです。
今は景気が将来的にも悪くなると考える人が多いので、結果として子どもは欲しいのにつくらない、子どもをつくらないなら結婚もしない、という経済的な将来不安を理由とする少子化が進んでいるのではないかと思います。実際に、「結婚しない理由」の最も多くを占めるのが「経済的理由」です。
――むしろ、結婚して子どもをもうけるべき、という価値観に基づいた政策や、政治家の発言に批判も集まりやすくなっている印象があります。
今の政策が間違っていると思うのは、保育園や幼稚園を無償化しましょうとか、子どもができたあとの支援のみにとどまっている点です。その前の段階で「結婚したいのに、経済的理由でできない人」も一緒に対策しないと、意味がないと考えます。
――実質賃金の成長率では、日本はOECD各国から完全に取り残されています。むしろ、お金を介さず物々交換によって成り立つ経済のあり方は考えられないのでしょうか?
物々交換という原始的な段階まで戻るとは考えにくいですが、日本経済がこのまま没落していくのであれば、いっそのことガラパゴス化を進めてエッジの効いた国になっていくという考え方はあるかもしれません。
米国ですら、トランプ前大統領時代には自由貿易から保護主義的な政策に転換していて、バイデン大統領もアメリカ・ファースト的になってきています。これはコロナ禍やウクライナ侵攻による影響が大きいと思います。
グローバルなサプライチェーンが寸断されたことによって、半導体からワクチン、マスクに至るまで国内だけでは何も作れないことに気づいてしまったのです。日本も、そういう意味では国内で作れるものに目を向けた方が良いと思います。その一つの鍵は、農業、特にコメだと考えます。
――農業というのは、意外な視点ですね。
ちょうど新潟県の燕三条で講演があったタイミングで、近くの農家さんに取材をしました。聞くと、「農業はあまりにも大変なので子どもに継がせたくない」という方が多くいました。跡継ぎがいないから困っているのではなく、意図的に継がせないようにしていると。
しかも、休耕地ができるたび、隣の耕作地の所有者は害虫や雑草の被害が出ないようにケアをしなければならない。負担だけ倍増して売り上げは一緒なわけです。そのような事情もあり、実は日本の農地が外国資本に少しずつ渡っているのです。
いわゆる「サイレントインベージョン」と呼ばれるもので、武力を行使せずに侵略できてしまうわけです。北海道の水利権が中国資本に買われてしまうなどの問題は数年前から指摘されています。背に腹は代えられないですから、困窮した日本国民が喜んで外資に権利を売却してしまっている現状があるわけです。
一方で食料もエネルギーも自給率が高いロシアは、先進各国から経済制裁を受けても決定的なダメージを受けていないことからも分かるように、自給率を高めることは国防にもつながるのです。
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