「給与を上げろ」「残業を減らせ」「経費を減らせ」――日々現場と経営の板挟みで悩みが尽きない人事・総務担当者に向けて、リアルな疑問に答えます。回答者は、KKM法律事務所代表の倉重公太朗弁護士。
Q: 退職者が「余っている有給を1カ月以上取得したい」と言っています。そんなに長期で取得されると引き継ぎが間に合わないので「有給取得を短くしてくれないか」とお願いしましたが、もしかして、これって違法ですか?
答え:有給取得を制限してはいけません。どうしてもという場合は、有給の買い取りを提案しましょう。
A: このお願いには注意が必要です。有給休暇は権利なので基本的には使えます。
ただし、退職者には、業務の引き継ぎがありますよね。有給がたくさんあるからといって、これらを一切何もしないで辞めていい、というわけではありません。最悪、事案によっては損害賠償もありえますし、そこまでいかないにしても、周りに迷惑をかけながら辞めていくのは良いことではありませんよね。
実務上、そのような観点から「有給の取得を少し減らしてください」とお願いすることはあります。その場合、例外的に「有給の買い取り」が認められます。有給は休むことが本質なので普段はできませんが、退職時に限っては買い取りが可能です。数日分有給を買い取り、十分な引き継ぎをお願いするケースが多いですね。
退職者がこのお願いに応じるかは義務ではなく交渉になりますが、完全に放置して企業に損害を与えると紛争になる場合もあります。そんな事態はお互いに避けたいですし、応じることがベターでしょう。
慶應義塾大学経済学部卒。KKM法律事務所 代表弁護士。週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング2022」では人事・労務部門1位を獲得。
第一東京弁護士会 労働法制委員会副委員長・労働法基礎研究部会部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長、日本CSR普及協会理事を務める。著作は30冊を超えるが、最新作は『実務詳解 職業安定法』(弘文堂)。Amazonの著者ページはコチラ。
労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、人事労務担当者・社会保険労務士向けセミナーを多数開催している。
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