「給与を上げろ」「残業を減らせ」「経費を減らせ」――日々現場と経営の板挟みで悩みが尽きない人事・総務担当者に向けて、リアルな疑問に答えます。回答者は、KKM法律事務所代表の倉重公太朗弁護士。
Q: 上司が勤務時間外、それも深夜や休日に業務命令の連絡をしてきます。ペースも頻繁ですし、メールに気付かずにいると電話が鳴りやまない始末。これってパワハラですよね?
答え:労働基準法違反です。緊急トラブルの連絡だとしても、労働時間としてカウントしましょう。
A: パワハラかどうかという話以前に、労働基準法違反ですね。業務なのに労働時間扱いをしていないので、サービス残業と同じですね。
これが続くようでしたら、私生活干渉のハラスメントにもなります。「このシステムはあなたしか分からない」というような、まれにしか起こらない緊急事態の場合、連絡するのは問題ないですが、労働時間はつけましょう。このケースでは、緊急でないときも連絡がきているように見受けられます。業務とプライベートの区分けは、上司がマネジメントしないといけません。
そもそもなぜ、こんなにも時間外に連絡する必要があるのでしょうか。もし本当に上司が業務について何も分からないのであれば、まずは部下に頼らないでできる業務体制を確立すべきです。現時点では、業務が属人化しているように感じます。
似たようなケースで、休日に上司が「思いついたことを忘れる前に送ってしまいたい」と連絡することがありますが、こういった場合は「対応は明日でいい」と記載しておけば問題ありません。
そのほか土日も営業している業界では、休日にクライアントから連絡がくることもありますよね。会社の中では「仕方ない」と対応する空気があるかもしれませんが、これは仕方ないことではなく、会社が方針を決めてきちんと判断しなければいけません。土日や時間外、深夜の対応は経営判断となります。対応するのであれば、労働時間をつけるのは最低限必須ですし、従業員は深夜対応の追加料金などを求めることもできますね。
しかし、果たしてこの人手不足の世の中で、本当に対応させるべきなのかという話にもなります。
小さい会社や下請け事業者だとしても「午後8時以降や土日の問い合わせには対応しません」と社長が決めている企業もあります。働き方改革が問われる今の時代、若い人の離職も食い止めなければいけません。昔ながらの企業でも、時代に合わせて働き方を変えているところはありますし、そうでない企業は経営陣の意識改革が求められます。
慶應義塾大学経済学部卒。KKM法律事務所 代表弁護士。週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング2022」では人事・労務部門1位を獲得。
第一東京弁護士会 労働法制委員会副委員長・労働法基礎研究部会部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長、日本CSR普及協会理事を務める。著作は30冊を超えるが、最新作は『実務詳解 職業安定法』(弘文堂)。Amazonの著者ページはコチラ。
労働審判・仮処分・労働訴訟の係争案件対応、団体交渉(組合・労働委員会対応)、労災対応(行政・被災者対応)を得意分野とする。企業内セミナー、経営者向けセミナー、人事労務担当者・社会保険労務士向けセミナーを多数開催している。
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