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4.1兆円「推し活」市場へ動くVisa カード会員を持たない決済ブランドが音楽を押さえるワケ(1/4 ページ)

» 2026年09月19日 08時30分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 五輪やサッカーW杯の協賛で知られるVisaが、音楽界の「推し」を支援し始めた。7月に歌手Adoのライブに協賛し、9月17日には音楽大手ユニバーサル ミュージックと、協業に向けた基本合意書を結んだと発表した。Visaは自らカードを発行せず、会員を直接持たない。その会社がなぜアーティストを押さえにいくのか。

 ライブ会場を埋め尽くす歓声、限定グッズを求めて伸びる長蛇の列、そして「推し」のために惜しみなく注ぎ込まれる熱狂的な消費──。

 市場規模4.1兆円へと膨れ上がり、可処分所得の4割近くを飲み込む「推し活経済圏」に、世界最大の決済ブランドが牙城を築こうとしている。

 Adoのスタジアムライブ協賛を皮切りに、ユニバーサル ミュージックとの戦略的提携を発表。「Visaカード会員限定の優先入場や先行購入」という、ファンが欲しがる限定体験を次々と繰り出している。

 決済の巨頭であるVisaが、なぜこれほどアーティストやレーベルを押さえにかかるのか。ファンの熱狂を購買力へと転換する「熱狂消費の設計図」に迫る。

photo1 ビザ・ワールドワイド・ジャパンの里村明洋マーケティング本部長(左)とユニバーサル ミュージック上席執行役員の玉木一郎氏(以下、提供写真)

4.1兆円市場「推し活経済圏」 観客から“参加者”へ変わるファン

 2026年の本屋大賞を受賞したのは、朝井リョウ氏の『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP)だ。日本経済新聞に連載された小説で、舞台は朝井氏のいう「“推し活”を土台とした経済圏」である。朝井氏は版元のインタビューで、普段はビジネス書を読む層に届いている実感があったと話している。

 小説の舞台になった経済圏は現実でも膨らんでいる。「推し活総研」(CDG、Oshicoco)が2026年1月に約2万3000人を調べた結果から推計すると、推し活をする人は約1940万人。前年の1384万人から約4割増え、市場規模は約4.1兆円になった。一人一人の入れ込み方も深い。博報堂などの2023年の調査では、推し活をする人は可処分時間の38.8%、可処分所得の37.4%を推しに充てていた。

photo1 推し活をする人は、可処分時間の38.8%を推しに充てていた(プレスリリースより)
photo1 推し活をする人は、可処分所得の37.4%を推しに充てていた(プレスリリースより)

 この消費の動きに決済ブランドのVisaが反応した。スポーツの協賛を続けてきた同社は7月3日の説明会で、日本でのブランド戦略を見直すと表明した。ビザ・ワールドワイド・ジャパンの里村明洋マーケティング本部長はその理由を、ファンが「観客」から「参加者」に変わったからだと説明する。SNSで発信し、ライブに通い、コミュニティに加わる。「見るだけの応援から参加する応援に変わり、購買を動かす時代になっている」(里村氏)

 参加するファンに近づく入り口として、Visaは音楽を選んだ。対象は音楽、アニメ、ゲーム、スポーツ、ライフスタイルの5領域だが、接触頻度、視聴時間、購買への影響度の3つとも音楽が最も高いというデータを里村氏は示した。第1弾はAdoのライブへの協賛だった。

photo1 ビザ・ワールドワイド・ジャパンの里村明洋マーケティング本部長
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