2009年はデジカメ界が比較的静かだった反動か、今年は面白かった。ここ数年で一番カメラを買っちゃったくらい。
この業界で面白いのは、殻を破ろうとするときと垣根がなくなっていくとき。2010年は後者。その垣根が何だったかといえば、一眼レフとコンデジの垣根。マイクロフォーサーズがその先鞭(せんべん)をつけたんだけど、2010年はソニーが動いた。買ったらきっと不満なこともあるだろうなあ……と分かっていながら、NEX-5をつい買っちゃったもの。
というわけで今年の1台といえばまずNEX-5。
何にしろ、新形態そして新フォーマット(マウント)の一号機。最初の1台は徹底的にやって欲しいと思うわけで、NEX-5はさまざまな要素をギリギリまで削ることで、そのメリットもデメリットも顕在化させている。
良さはコンパクトだけれどもグリップしやすくて撮りやすいこと。背面液晶を開いて胸からおなかあたりの高さで撮ると快適。ハードウエアのデザインは非常によくできていて、コンデジ感覚で気楽に持ち歩いて自由にサクサク撮れるのにクオリティは一眼レフクラス。これが楽しい。予想以上に出動機会が多いカメラになってる。
欠点はユーザーインタフェース(UI)。たぶん初心者のことを考えすぎたのだろうけれど、ボタンが少ない上に操作系が練れていなくて、ちょっと細かい設定をするたびにイライラが募るという残念なUIだったのだ。
だが秋に提供された新ファームウェアによってボタンカスタマイズ可能になったおかげでストレスは少し減った。わたしはセンターキーでISO感度、ホワイトバランス、ダイナミックレンジコントロールの3つを設定できるようにしてる。
でもこうして良しあしがはっきりしたのはよいこと。
もうひとつの欠点はレンズのラインアップ。2011年にはもうちょっとそろいそうなので、しばらく標準ズームだけで待ってみることにした。
まあ初代機なので欠点が多いのもしょうがない。このサイズのまま洗練されていくと面白いカメラになると思う。タッチパネルをうまく搭載すれば操作系も改善されるだろうし。
NEXに限らず、2011年もミラーレス一眼はまだまだいきそうだ。
2番目はコンデジからカシオの“EXILIM”「EX-H20G」。
カメラの役割って3つあると思う。ひとつは「表現」。写真は表現であり作品である。2番目は「コミュニケーション」。3番目は「記録」。
記録としての写真で大事なのは、「いつどこで何を撮ったか」だ。この3つがそろっていれば、あとから写真を探したり分類するのがぐっと楽になり、撮りっぱなしではなくなる。
「いつ」は解決してる。撮れば日時は記録される。「何を」は今発展しつつあるジャンルで、自動シーン認識や顔検出を応用すれば将来はある程度は自分でタグをつけなくてもよくなるだろう。
「どこで」を解決するのは位置情報。
で、春先にパナソニックとソニーから1台ずつGPS搭載コンデジが登場したが、どちらもGPS機能は微妙で、GPS衛星の電波を捕まえられずにいると、あらぬ場所で撮ったことになってる写真が続出してしまう。
その点、秋に出たカシオのEX-H20Gは衛星電波を利用するGPSにモーションセンサーを組み合わせて位置情報取得を取得するし、電源オフ時でもカメラが動いていれば10分おきにGPSが働くので、普通に持ち歩いて撮るだけでおおむね正しい場所を記録してくれる。これは実用レベル。
旅行時のみならず、日常的にカメラを持ち歩いていろんなところで無造作に撮る人にはこれは面白い。一種のライフログのように使える。カメラ性能や画質には改善の余地ありありで不満も多いけど、位置情報取得については他を圧倒している。
これを機に、実用レベルのジオタグ機能を搭載したデジカメが増えるとうれしい。
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コンデジ系でもうひとつ2010年のトピックを上げるなら、裏面照射CMOSセンサーモデルが続々と出たこと。代表はソニーの“サイバーショット”「DSC-WX5」と「DSC-HX5V」かな。裏面照射CMOSセンサーならではの楽しさをシンプルに味わうならDSC-WX5がいいかと思う。
サイバーショットは普通に撮っても高感度に(比較的)強いし、CMOSセンサーならではの速さを利用したフルハイビジョン動画撮影、スイングパノラマ、手持ち夜景、HDRはかなり遊べる。裏面照射CMOSセンサー搭載モデルの評判と、とうとうSDメモリーカード対応を果たしたことで、サイバーショットそのもののシェアも伸びているようだ。
デジカメに求められるのは「撮る」と「見る・見せる」で、撮る方は上記の各機能や、各社がとりいれはじめた「アートフィルター」系などデジタル処理を施しまくった面白い機能が出てきた。
問題は「見る・見せる」の方で、ここを放置するとスマートフォンにくわれる可能性がある。それが2011年の課題だろうなと思う。
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