丸1年で一気にそろった「Gn X(nは1桁の奇数)」シリーズ。その末っ子が今回紹介する「PowerShot G9 X」である。そうだな、過去のPowerShotを知っている人には、2013年を最後に音沙汰がなくなり、2015年春にはラインアップから消えちゃって、「え、もう後継機は出ないの?」とファンを心配させた「PowerShot S120」の1型センサーバージョンと思うといいかもしれない。
小さくてシンプルでポケットに入って、でも高画質なハイエンド機として人気だったPowerShot Sシリーズ(PowerShot S90→PowerShot S95→PowerShot S100→PowerShot S110→PowerShot S120と5代続いた)の真の後継機なのだ。今後のコンデジの基本となるような、そんなカメラである。
“S120より小さい”ボディに1型センサーを入れた関係で、レンズのズームレンジがちょっと他モデルに比べて弱いというのはあるけれども、1/1.7型で1210万画素だったのが1型で2020万画素に大幅に進化したのだから多少は仕方あるまい。
Gn Xシリーズの末っ子であるが、やはりここはS120の後継機として捉えるべきだろうというわけで、1/1.7型センサーを搭載した(当時の)ポケッタブルなハイエンド機として十分小さかったS120と比べてみたいと思うのである。例によって、表を1つ。
PowerShot G9 X | PowerShot S120 | |
---|---|---|
35ミリ換算焦点距離 | 28-84mm相当 | 24-120mm相当 |
実焦点距離 | 10.2-30.6mm | 5.2-26.0 |
開放F値 | F2.0(広角端)-F4.9(望遠端) | F1.8(広角端)-F5.7(望遠端) |
有効画素数 | 約2020万画素 | 約1210万画素 |
センサーサイズ | 1型 | 1/1.7型 |
外形寸法 | 幅98.0×高さ57.9×奥行き30.8mm | 幅100.2×高さ59.0×奥行き29mm |
撮影時重量 | 約209g | 約217g |
PowerShot G9 XとPowerShot S120を比べてみた。特にサイズと重さに注目。驚くべきはサイズと重さ。とにかく小さい。ボディはS120より小さくなったのだ。奥行きが1.8ミリ大きくなった以外は幅も高さもS120より小さいのである。いやそれどころじゃない。G9 Xの横幅は98ミリである。1/2.3型という小さなセンサーを積んだ普及型コンデジ「IXY 640」の横幅が99.6ミリなので、それより幅が小さいのだ。撮影時重量も1/1.7型センサー機のS120より1型センサーのG9 Xの方が軽いのである。それでいてセンサーサイズの面積が3倍近いので画質はずっといい。いかにすごいか分かっていただけるかと思う。
焦点距離はさすがに、24-120ミリ相当まで進化したS120に比べると、広角側が28ミリというのはちょっと残念だし、望遠側が84ミリ相当というのも短いけれども、センサーサイズが大きい分、実焦点距離も長いしレンズ径も大きくなるわけで、ズームレンジを気にする人は「PowerShot G7 X」を選びましょうってことでいいんじゃないかと思う。
広角側が28ミリ相当ではあるが、ポケッタブルなスナップ用ハイエンド機と思えば十分使える。
開放F値はF2.0-4.9とボディのコンパクトさを考えるとなかなか優秀。最短撮影距離はレンズ前5センチ(広角側)。望遠側では約35センチ。またオート時はシームレスマクロだが、それ以外の撮影モードでは近距離撮影時はマクロモードにしてやらねばならない(逆にマクロモードでは遠距離にピントが合わない)のはイマドキのコンデジとして残念な点だ。
画質的には1型センサー機ならではの豊かさを持っていて、このサイズや手軽さを考えたら十分過ぎるほど。ただG7 Xや「PowerShot G5 X」などと同様、AFは基本的に速いものの、時々狙ったところに合いづらいことや、シーンによっては背景に抜けてしまう(特に暗めの場所に弱い印象)のが気になった。
幸い、タッチAFが使えるのでうまく使いたい。タッチAFは他のシリーズ同様、「顔検出+自動追尾」か「1点AF」かのどちらかになる。顔があればそれを検出し、なければ1点AFという組み合わせができないとか、AFモードをさっと切り替えられないのはちと不便なところか。
前述したように幅が10センチを切ってる。なのに背面には3型で約104万ピクセルの、しかもアスペクト比が3:2の液晶パネルを搭載しているので、同じ3型でも幅はちょっと広い。背面に各種キーを置くスペースはあるのかというと、ない。十字キーがないのである。背面にはモニターの右側に縦に録画・Q/SET・MENU・INFOボタンが並ぶだけで、おなじみの円形十字キーもホイールもない。
レンズ回りのリングは使えるが、それ以外は「タッチパネルで操作する」仕様なのだ。ハイエンド機でタッチパネル操作のカメラを出すとはなかなか大胆である。タッチパネルの操作はシンプル。画面上のボタンを押して、タップやスライドで動かすだけだ。
例えば、AFとMF、タッチシャッターのオン/オフ、リング機能の切り替えといったボタンが表に出ており、それらはすぐに押せる。リング機能切り替えボタンをタッチすると、絞り優先の場合は、リングの機能が絞り値→露出補正→ISO感度設定と順繰りに切り替わるので、機能をセットしてリングを回すという操作が可能だ。また、直接画面上の露出補正やISO感度をタッチしてタッチパネルで変更することも可。「四角い枠」で囲ってある部分がタッチできると思っていい。それ以外の場所をタッチすると、タッチAFとなる。
画面上の「Q」を押したときのQメニューやメニューのデザインは従来同様だが、全てタッチ操作できる。さすがにMENU画面は十字キーを使った方が簡単かと思うが、慣れれば操作性は良好だ。
素早くセッティングするには向かず、タッチパネル操作としてはスマートフォンほど快適ではないが十分使えるレベルだ。
再生ボタンは上面にあり、再生時ももちろんタッチパネルで操作できる。2本指の拡大/縮小操作やフリックでの写真めくりができる。スマートフォンに慣れている人は、あの感覚で操作すればOKだ。なお撮影モードはちゃんとモードダイヤルがついているのでそこは安心。クリエイティブショット機能なども持っている。
G5 Xと同様、USB充電が可能になったのはよい。どのACアダプターやモバイルバッテリーでもOKかというと、うまく充電できるものとそうじゃないものがあったが、市販のmicroUSBケーブルとモバイルバッテリーやACアダプターが使えるのは旅行時にうれしいところだ。
つまるところ、細かい点で気になるところはあったが、スナップ用コンデジとしては非常に優秀で、毎日気軽に持ち歩けるカメラが欲しい人には実に魅力的な製品だ。このサイズに1型センサー+ズームレンズがおさまるとは思わなかった。
これで、キヤノンのハイエンドコンデジ(プレミアムシリーズ)5兄弟がそろった。IXYなど、かつて主力だった普及型コンデジのラインアップがぐっと絞られているところと合わせて考えると、すっかり主力はハイエンド機に移ったと思ってよく、小さくて軽いG9 Xから、大きいけど高倍率な「PowerShot G3 X」まで選べるようになったのだ。個々の完成度はまだ上げられる気がするけれども、どこよりも先に上から下まで大型センサーコンデジを並べてきたという思い切りにキヤノンの凄さを感じる次第である。
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