出版業界ニュースフラッシュ 2012年4月第4週

出版業界で起こったニュースにならない出来事をまとめてお届けする週刊連載。日書連が大手取次2社を「不当取引」で公取委に訴えたことなどが話題になりました。

» 2012年05月02日 17時30分 公開
[新文化通信社]
新文化通信社

トーハン、「効率と増売」施策掲げる

 4月26日、全国トーハン会代表者総会を行い、近藤敏貴社長と川上浩明、正能康成の2専務が平成24年度の販売施策を伝えた。

 近藤社長は「すべての施策の目的は書店の売り上げを上げるため」とし、「TONETS V」と9月にリリースする「TONETS I」を活用した出版SCMと、「知の地域づくり」を強調。川上専務は「TONETS V」導入効果が書籍で最大5.6%増、雑誌で4.8%増の効果があると報告。正能専務は地元の書店が図書館納入できる地産地消型の事業にする考えを示した。29の各地トーハン会とトーハン図書館事業部などで「知の地域づくり 全国推進部会」も組織化した。

 プレミアムセールでは東北トーハン会の福島支部が1位、同青森支部が2位となり、出版社から大きな拍手が沸いた。3位は四国トーハン会。

Web文芸誌「マトグロッソ」がリニューアル

 イースト・プレスが運営する「マトグロッソ」は4月26日、新たに「動画」や「音」コンテンツを盛り込んで大幅なリニューアルを行った。

 動画などを配信する「木曜新美術館」、読者参加型の「リズムシさんのジッケンムシ」といった新コンテンツを開始。「木曜新美術館」では、最先端のメディア表現やクリエイターを紹介する「マトグロッソTV」などを展開。約6分の動画を毎週更新していく。そのほか、松原卓二氏による写真連載「動物ω写真家の毎日@富士山麓」や、梅佳代氏、川島小鳥氏らのアーティストグループ「ハジメテン」が、高校生の学校生活を1年間取材し、写真やイラストで表現する「ハジメテンのHi! School!」などを展開していく。

【日販分類別売り上げ調査】3月期、前年同月比1.8%減に

 前年同月比は、1.8%減で23カ月連続のマイナスとなった。ただし、1月期(同4.4%減)、2月期(同4.1%減)よりマイナス幅は改善。また、「書籍」は同1%増で、9カ月ぶりにプラス成長となった。規模・立地別では、11分類中6分類が前年超えを達成したが、「100坪以下」(同4.1%減)、「商店街」(同6.3%減)の落ち込みが大きかった。

 「雑誌」の売り上げは、同4.2%減。「一般誌」のうち「週刊誌」は、昨年、分冊百科「パッチワーク」(デアゴスティーニ・ジャパン)がヒットしていたことに加えて、総合週刊誌の震災関連特集が好調だった反動で同10.2%減。

 一方、「書籍」の「文庫」は、湊かなえ『少女』(双葉社)、有川浩『三匹のおっさん』(文藝春秋)など、売り上げ好調銘柄が複数あり、同4.6%増。また「学参」も、中学校の新学習指導要領の実施を受けて、教科書ガイドの売り上げが伸長し、同5.0%増となった。

 なお、震災の影響などで売り上げが大幅に増減している書店は対象外としている。

日書連、大手取次2社を「不当取引」で公取委に訴え

 4月19日、理事会で「送・返品同日精算」問題について、日販とトーハンが不当な取引制限から優越的地位の濫用に触れるとして公取委審査部に申告することを満場一致で決めた。4月中に文書を作成し、5月上旬に提出するという。

 取次会社から書店に送品された本の請求分から書店返品分を相殺する期限を同日にすることを要求し交渉を続けていたが、難航し、今回の決定に至った。大手取次2社ほか、他の取次会社でも入帳日の短縮を図って回答していたが、「同日」を主張する日書連との話合いは暗礁に乗り上げた格好になっていた。

Copyright 2015 新文化通信社 All Rights Reserved.