ノークリサーチの伊嶋謙二社長によると、過去の売り掛けが見込めなくなる2009年度以降の中小企業の経営はかなり厳しい。元気を取り戻すためには、働き手を求める企業と労働機会を求める労働者の出会いを支援するべきだという。
「コスト削減をしても仕事がなくなったら企業活動は成立しない。コストを削減できても、売り上げは増やせないという従来のITの限界が露呈した」
中小企業専門のIT調査会社、ノークリサーチの伊嶋謙二社長は日本の中小企業の現状について話す。3月で終了する2008年度はまだ年度前半の好況期の影響で持ちこたえているが、過去の売り掛けが見込めなくなる2009年度以降はかなり厳しいという。中小企業が元気を取り戻すためには、働き手を求める企業と労働機会を求める労働者の出会いを支援するべきだという。同氏に2009年の中小企業の活性策を聞いた。
ITmedia 2008年後半の金融危機から始まった景気後退について、日本の中小企業にどんな影響が出ていますか。
伊嶋 現在はITというよりは経営の問題が起きています。簡単にいえば仕事がない状態です。コスト削減は企業活動の継続を約束しません。5年後ではなく明日のことがより重要なのです。その意味で、中小企業にとって今はSaaS(サービスとしてのソフトウェア)のようにすぐにお金にならないことを語っている暇はないようです。企業として経営を継続していくためのコアを確立しなくてはいけません。
そのために、前近代的な役割しか担えていないITの再定義が起こるでしょう。ITの本来の意義は、企業活動をより上の層に引き上げることであって、コスト削減が目的ではないのです。では何が不足しているのか。現状不足しているのは、ITというよりも、導入したITを十分に使い切れていないことです。その要因はヒューマンリソースやスキルの不足なのです。
ITmedia 人という経営資を有効活用する場合、具体的にはどんな方法がありますか。
伊嶋 スキルを求める企業とスキルを持つ人をマッチングさせる、いわゆる「出会い系」の仕組みが求められます。キーワードはアナログです。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のような仮想化の仕組みでは、中小企業のほとんどの人はピンとこないでしょう。実際に出会い、話をする場を作り出すのが近道です。
地方には、ITの使い方も分からず、事業の低迷に成す術もないという中小企業が多いのです。一方で、それを支援できるはずのシステムインテグレーターなども、顧客がおらず、仕事がないという深刻な悩みを抱えています。例えば、こうした中小企業とシステムインテグレーターを出会わせることで、中小企業は低迷を脱するきっかけが得られ、システムインテグレーターは仕事を確保できるわけです。
具体的には、各地の会議場などを使ってこうした出会いの場をつくり出すと効果的です。しかし、一部の自治体だけがやっても日本経済全体への影響は限られます。ここで国の出番です。国策として、こうした出会いの場を全国各地に作り出せばいいのです。中小企業庁が、定年を迎えたITの専門家をCIOとして中小企業に派遣するといった取り組みを2008年に開始しましたが、そうした取り組みを強化するべきです。経済産業省がSaaSの支援などをしていますが、今は的外れです。日本各地の中小企業のビジネスを活性化させる草の根の活動を支援してほしいです。
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