1件ごとの工事案件を「見える化」――5000万円のコスト削減データベースで利益確保(2/2 ページ)

» 2009年07月09日 16時20分 公開
[大西高弘,ITmedia]
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工事一件に発生する余剰資材の管理

 京葉工管のデヂエの活用は、売掛金の回収だけにとどまらない。同社ではデヂエを使って、各工事案件の管理にも役立てている。デヂエ導入までは、1件の工事に関しての資材コストの管理を、売掛金のように「見える化」はできていなかった。

 「資材のコストは年度末、各期末にグロスでまとめて管理していたというのが実態でした。1件ごとの管理をしようといっても、各事業所のマンパワーが足りず、専任者を置くことも難しかった。協力会社さんへの工賃の支払いなど、人件費の管理については、事業所の責任者が細かくやっていたのですが、1件当たりの工事の資材コストは現場の責任者に任せているケースが多かったのです」

 もちろん、現場の工事責任者に1件当たりの資材関連のコストをすべて細かく把握するという考え方もあると思うが、現実的にはそれは難しい注文だったという。複数の工事案件を抱えている現場では数カ月単位で、どれだけコストが発生しているかを把握するのが精いっぱいというのが現実だった。

 「マンションや住宅、道路などでのガス工事を受注すると、当社の担当者はガス会社さんに資材の発注をして、現場で作業をします。こうした案件を複数抱えているので、1件当たりの資材コストについては、把握しづらい。もちろんガス会社さんなどから注文した資材についての情報はいただいています。各工事が終わった後、1件につき実際にどれだけ資材が使われたのかについては、調べようと思えばできるけれども、どうしても期末などにまとめてどれだけコストが掛かっているかを把握する方向に管理が向いてしまう」と内田氏は話す。

 しかし、工事件数はここにきて減少してきており、いままで以上にコスト管理を徹底する必要が出てきた。そのためには、数カ月分の工事をまとめてコスト管理するのではなく、1件当たりの管理がどうしても必要になる。また、1件の工事について現場では少し多めの資材を発注するケースが多いという状況は把握していたので、コストを削減するには、この余剰資材の管理が手っとり早いと考えられた。

 「工事では計画にはない事態が発生することもあり、完成期日の遅れがないように多めの資材発注がされます。これはこれで仕方ないのですが、余った資材はすぐに返却すれば、換金できます。余剰資材についての管理はコストカットの大きな柱になるのです」(内田氏)

工事量は減っても利益は増える

 実際は工事で使わなかった資材は、協力会社の倉庫に保管されているなど、管理が徹底されていないことが分かり、デヂエを活用して余剰分の資材を管理することになった。資材を発注する際、ガス会社から送られてくる発注データをCSVで取り込んで、デヂエに入力する。余剰資材は必ず出るものとして考えれば、それらを放置している場合と放置しないで換金化している場合では、1件当たりのコストが明確に違ってくる。余剰資材の管理をしっかり行っていれば、同様の規模の工事でも、管理をしていない案件に比べて最終的な資材コストが少なくなる。

 「1件につき、掛かっている資材コストが見えますから、余剰資材の管理をしていないと『あれ、どうしてこの工事はこんなに資材が掛かっているの?』ということが誰にも見えるようになるわけです。資材は放置していると劣化して換金できなくなるということもあり、データが見えるようになって関係者が進んで処理をするようになりました」と内田氏は話す。この結果、同社の試算で約5000万円のコスト削減が実現できたという。受注する工事量は減っているのに、利益は増加していることから、こうした資材に関する管理は大きな効果を生み出したといえる。

 内田氏はこうした結果を踏まえ、今後はデヂエで得られたデータを自社の原価管理システムに取り込み、さらに詳細な工事1件当たりのコスト管理を進めていきたいという。

 「こうした取り組みは予実管理をさらに明確にものにすることにつながります。お金を管理する人と工事を管理する人、それぞれの立場で現状を把握すれば、利益の拡大に寄与できるはずだと考えています」と内田氏は今後の展開について語る。

 このように、特定のセクションが一手にコスト管理を引き受けることができないケースは多い。また、引き受けてもそれぞれの仕事のデータ入力は複数の事業所のマンパワーに依存するしかないケースも珍しいことではない。その際、データ入力が簡単で社内全体でそれを閲覧できる体制が不可欠になってくる。京葉工管は見える化を進めたことで、社内全体のコスト意識を強くし、仕事に追われる現場担当者にも、「今会社が何を求めているか」を明確示すことができた事例だといえよう。

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