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» 2009年09月11日 08時00分 公開

パラダイムシフトが進む製造業、IT投資の行く末はアナリストの視点(2/2 ページ)

[小林明子(矢野経済研究所),ITmedia]
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製造業のIT投資、回復は2010年以降の見通し

 険路を進む製造業向けITビジネスだが、この状況はいつまで続くのだろうか。2009年半ばから一部の経済指標が好転し始め、「景気底打ちか」という声がささやかれるようになった。だが、製造業ではようやく生産調整が一段落した状態だ。IT関連に予算が回ってくるには半年から1年くらいの時間を要する。そのため、本格的に投資意欲が回復するのは2010年以降になるだろう。

 それでも、2008年度末に見舞われた急転直下のマイナス成長という段階は過ぎ去った。前述の調査データでも、加工組立製造業において2010年度の投資額がプラスに転じている。また、ITベンダーからは「2009年度に入って引き合いが多少戻ってきた」「2009年は我慢の年だが来年には期待したい」といった声を聞く機会が増えた。2008、2009年度に予算を絞り込んできた製造業が、復活と成長を期してIT投資を再開する可能性は十分にある。

注目市場の「環境」、課題は具体的な取り組み

 製造業が目下の不況を乗り越えた先にはどのような世界が待っているのか。それを見通すためには、「環境・エコ」に注目しておく必要がある。環境関連に対する一般的な注目度が高まっていることに加え、エコカー減税やエコポイント制度といった政府の支援する制度に対する期待も大きい。製造業全体においても必要不可欠なキーワードだ。

 環境と関係するITのテーマといえば「グリーンIT」だ。同調査によると、今後3年間で新たにグリーンITに取り組む意向があると答えた企業は、プロセス製造業で48.0%、加工組立製造業で54.8%に達した。製造業の回答比率は、流通やサービス、金融などの他業種よりも高く、グリーンITに意識が向いている。

今後3年間でグリーンITに取り組む意向の有無について 今後3年間でグリーンITに取り組む意向の有無について(矢野経済研究所調べ)

 企業は今、コア事業に対して限られた予算の中でメリハリの効いた投資を行うことが求められている。こうした中、環境分野は多くの企業で戦略的な投資分野と位置付けられている。ハイブリッドカーや電気自動車、エコ家電、新エネルギーなど、環境関連の製品や技術に対する企業の期待は大きい。

 「自動車業界でIT投資があるのはエコカー関連の事業のみだ」と言う声もあるが、エコカーの周辺には燃料電池やモーター、電気自動車の充電インフラなどの各産業が関連している。ITビジネスにおいては、商品や組み込みソフトウェア、生産工場のシステムの開発といった新たな需要が見込まれるだろう。

 ただし、環境分野でのITビジネスはまだ限定的といえる。また、エコカーなどの具体的な製品以外では、環境とビジネスがどう結び付くかについての明確な答えはない。それぞれの企業が事業計画や採算性を反映させたビジネスモデルを模索している段階だ。具体的な戦略が描ける企業がまだ少ないことが、環境関連にITビジネスを応用させる上での課題になるだろう。


 100年に一度の不況の先に待っている世界は、現段階では極めて不透明だ。不況における最悪の時期は過ぎたが、2008年以前に製造業が享受した好景気が再来するわけではない。自動車業界は従来の自動車からエコカーへの転換を図っている。これは、社会で必要とされる製品やサービスは変わり続けていることを示す。

 こうした変化に伴い、製造業のビジネスモデルや業界内におけるプレーヤーの構造も変容しつつある。当然、製造業向けに展開されるITビジネスも、このパラダイムシフトに柔軟に対応する基礎体力と先見性が求められてくる。

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