iPhoneデベロッパー規約でGoogle傘下のAdMobを締め出したはずのAppleだが、実際はAdMob広告を配信するiPhoneアプリを承認している。当局の追及をかわすためだろうか。
デベロッパー規約の新たな条項とは逆に、AppleはGoogleやそのAdMob部門などが配信するiPhone・iPadアプリ内ターゲット広告を許していると、Wall Street Journal(WSJ)が伝えている。
Appleは6月に、iPhone 4に搭載されているiOS 4のデベロッパー規約を変更し、AdMobなど非独立系の広告技術プロバイダーがアプリからデータを収集することを禁止した。これにより、iPhoneアプリ内でターゲット広告を配信するのが困難になる。
この新たな規約は、AppleのiAdプラットフォームを有利にするためのものだった。iAdは7月1日から稼働しており、開発者はこのシステムを使って自身のアプリ内で広告を配信し、収益を得られる。
同様のアプリ内広告を配信するAdMobは、新たなデベロッパー規約は開発者と消費者に打撃を与えると苦情を訴えた。AdMobは5月にGoogleに買収された。
米連邦取引委員会(FTC)はAdMobの苦情を受けて、Appleのモバイルビジネス慣行を調査していると報じられている。
だがWSJは7月1日、iAdがスタートした数時間後に次のように伝えた。
ソフト開発者は、新しいアプリやアップデートしたアプリが、GoogleのMobile AdSenseやAdMobなどのサードパーティー広告ネットワークの広告を配信できるようになっていても、Appleから承認されたと話している。
WSJは、iPhoneおよびiPadで承認されたGlu Mobileのゲーム「Super KO Boxing II」で、AdMobが広告配信に使われていることを指摘している。ニコライ・サンダー氏の「Spawn Glow」アプリは1週間以上前にiPhone 4向け配布を承認されたが、GoogleのMobile AdSenseを使っている。
AppleとGoogleはコメントを控えている。Appleにしては意外な動きだが、賢明だ。
GoogleやAdMobに独禁法違反を主張する理由を与えないことで、FTCに調査を進める口実を与えないことになる。利口なやり方だ。
意外なのは、Appleが迫り来る圧力に屈することだ。普通ならそんな圧力は無視するところなのだが。それは、「かかってくる相手はすべて迎え撃つ」というスティーブ・ジョブズCEOの攻撃的な考え方によく現れている。
Appleは、政治に無関心な態度を見せるいつものやり方を外れてまで、慎重に戦いを選んでいるように見える。
もちろん、AppleがiAdに関してこのような対応を取っても、同社の位置情報利用に対する米連邦議員が示している懸念をかわせるわけではない。Appleは現在、ユーザーが位置情報の提供を拒否するオプトアウトを認めていない。
これは消費者のプライバシーの問題で、競争上の問題ではない。それでもやはりAppleは、当局ににらまれるのを避けるために事業慣行を調整し、戦いを選ぶだろう。
ある読者からは、次のようなコメントが寄せられている。
議員らは、Appleから尊敬されていないと感じている。Appleは選挙運動にほとんど資金を提供していない。議会は腐敗した選挙資金調達制度に賭けている。Appleを攻撃すれば、選挙資金を幾らか出すと期待しているのだ。
興味深い意見だ。たぶんAppleは議会に影響力を持たないために、iAdのライバルに対する方針を修正しているのだろう。これが、Appleのほかのビジネス分野にも広がるのかに注目だ。
その間、AdMobやGoogleのMobile AdSenseを使っている開発者はiPhone 4やiPadに自由に広告を配信できるようだ。
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