基幹システムとクラウドをつなげるIBMの“秘策”

日本IBMが2015年のクラウド事業戦略を説明。オンプレミスとクラウド環境、構造化データと非構造化データの全てをつなぐサービス利用を可能にしていくという。

» 2015年04月27日 16時32分 公開
[國谷武史ITmedia]

 日本IBMは4月27日、2015年のクラウド事業戦略について説明した。社内の基幹業務システムやクラウド上のシステム、また、同社が「Systems of Record(SoR)」と呼ぶ定型化データや「Systems of Engagement(SoE)」と呼ぶ顧客関係構築などのためのデータを連携できるサービス展開に注力する。

 同社では2月にクラウド事業統括部門をポール与那嶺社長の直下の組織に再編した。クラウド事業統括部担当の小池裕幸執行役員は「ハイブリッドクラウドを全方位に展開していく」と表明し、企業内システムと同社のBluemix(PaaS)やSoftLayer(IaaS)を連携させるクラウド利用の拡大を目指す。

 小池氏は、IBMのクラウドサービスではアプリ開発者の効率を高める環境に注力していると説明する。その1つが「Application Composition Environment(ACE)」と呼ぶ概念で、アプリの実行環境(PaaS)とアプリのサービス(SaaS)の中間に位置付ける。例えばアプリ開発者がアプリに位置情報の機能を取り入れたい場合、自身で機能を開発することなく、IBMのパートナー企業が提供する機能サービスのAPIを実装するだけで、必要な機能をスピーディーに実現できるという。

アプリ開発を効率化するという新機能の一例

 Bluemixでは「API Harmony」というAPI検索や、社内システムとの安全な接続を簡単に設定するという「Secure Passport Gateway」などの新機能を提供。API Harmonyでは提供APIを増やすべく国内ISVなどを中心としたコミュニティー「Bluemixユーザーグループ」を立ち上げ、5月から本格的に活動していく。

 クラウドマイスターの紫関昭光氏によれば、特にSecure Passport Gatewayは、ハイブリッドクラウドの肝になる機能になるという。同機能ではDockerのコンテナを利用した「セキュアゲートウェイクライアント」をDMZに設置し、セキュアゲートウェイクライアントを介して社内システムとBluemixのデータセンターが暗号化通信(TSLなどを利用)で接続される。「Cloud Integration」という別メニューを使って、セキュアゲートウェイクライアントへのアクセス制御もきめ細かく設定できるという。

Secure Passport Gatewayに接続イメージ。ゲートウェイ機能をDockerコンテナで容易に実装できる

 この他に、社内でBluemixのサービス環境を構築・運用できる「Bluemix Local」という新メニューを追加。Bluemixを利用したアプリ開発コンテストも2014年に引き続いて開催し、新たに学生部門を設ける。ユーザーの多くがベアメタルの利用であることから、Bluemix Dedicatedサービスでは年内にOpenPowerベースのマシンを利用できるようにする。

 IaaSのSoftLayerでは東京リージョンで利用可能なプロセッサに第3世代のHaswellを追加しているという。

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