NTT comらが温室効果ガス(GHG)排出量をクラウドで可視化、業界ソリューション開発へ

伊藤忠丸紅鉄鋼とNTT Comは、温室効果ガス排出量を可視化するクラウドサービスの実証実験を開始した。サプライチェーン上の企業が排出量に関する実データを提供し、伊藤忠丸紅鉄鋼の鉄鋼業界に関する知見と、NTT ComのICT技術を組み合わせて推進する。

» 2023年02月15日 07時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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 サプライチェーン全体での温室効果ガス(GHG)排出量削減が求められる中、業界特化型のクラウドサービスでデータを集約、可視化する取り組みが始まった。

 伊藤忠丸紅鉄鋼とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2023年2月14日、GHG排出量を可視化するクラウドサービスの実証実験を開始すると発表した。2023年度上期中にもクラウドサービスとして提供を開始する計画だ。

GHG排出量可視化ソリューションが目指すゴールのイメージ図(出典:NTTコミュニケーションズのプレスリリース)

GHG削減目標達成に必要な1次データ活用を支援

 実証実験はサプライチェーン上の企業がGHG排出量に関する実データを提供し、伊藤忠丸紅鉄鋼の業界知見と、NTT ComのICT技術を組み合わせて推進する。両社は、サプライチェーン全体を俯瞰したGHG排出量の削減を図るソリューション群の提供を共同で検討することに合意しており、今回の実証実験はその第1弾に当たる。

 GHG排出量を算定する際に使う「活動量当たりの温室効果ガス排出量」(排出原単位)は、「1次データ」と「2次データ」に分けられる。1次データは個別企業が排出する実績値のデータで、2次データは環境省などが業種や製品別に平均し公開しているデータを基にする。

 ただし、企業がGHG排出量を算定する際に2次データを基にした場合、実績値ではないため精度が低く、GHG排出量を削減しても原単位には反映されにくい。結果として自社のGHG排出量を削減しにくいといった課題がある。このため、より正確な1次データを活用する必要性が高まっている。

 今回の実証実験では、鉄鋼製品を製造、販売、購買する複数の企業の協力を得て、次の3点を主に検証する。1つ目は、サプライチェーン上の企業の間で1次データを共有し、製品単位のGHG排出量をより正確に算定すること。2つ目は、製品単位のGHG排出量を活用して自社全体の値をより正確に算定すること。3つ目は、GHG排出量の共有および算定をクラウドサービスとして実装する際の、実用性と効率性を評価することだ。

 実証実験を実施するに当たって、伊藤忠丸紅鉄鋼は、国内外での幅広い取引によって確立したグローバルビジネス基盤が持つ機能と、鉄鋼製品業界に関連する多様な知見を提供する。一方のNTT Comは、ICTとOT(Operational Technology)を組み合わせたソリューションの蓄積による、データ活用やIoT、ネットワーク、セキュリティ、クラウドなどの技術に関する知見を提供する。

 伊藤忠丸紅鉄鋼とNTT Comは、今回の実証実験を通じて2023年度上期に、鉄鋼製品のサプライチェーン全体にわたるGHG排出量を可視化するクラウドサービスの提供開始を目指す。

 さらに、排出量に関するデータの収集、算定、分析、情報開示とGHG排出量削減に向けて、企業の業務負荷軽減と社会的なGX(グリーントランスフォーメーション)への貢献を図るソリューション群の提供を「MIeCO2」プロジェクト内で共同で検討するとしている。

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