アジャイルシステムテスト活動に関連して得られたメリットの中で、特に目立ったものを以下に挙げる。
開発されたシステムテストアプリケーションは、複数のイテレーションにまたがって継続的に強化が行われたため、極めて高い品質を持っていた。これらに改良を加える際は、バリデーション、ロギング、そして例外処理など、アプリケーションのほかのさまざまな側面も改善された。従来のようにテスト準備フェイズに集中して開発するのではなく、何カ月もかけて開発されたテストアプリケーションは、一段と堅牢なものとなった。
アジャイル環境において開発部門と密接に協力するコアシステムテストチームは、開発組織に大きな潜在的メリットをもたらす。このコアチームは、製品リリース前の最終システムテスト中に使えるシステムテストアプリケーション、シナリオ、そして自動化スクリプトの一部を用意することができる。開発部門と一緒にこれらの素材を製作および実行することは、システムテストチーム全体の生産性向上とスピードアップの促進に役立っていく。
スキルトランスファーの観点から、システムテストのコアチームはシステムテストチーム全体に対し、適切なタイミングで新技術を導入し、コンテンツをリリースすることができる。コアチームは顧客志向のアプリケーションデザインを提示し、チーム全体に対してそのアプリケーションのデモを行うほか、開発資料の適切な箇所を提示したり、開発担当者の連絡先を用意して、フルシステムテスト・イテレーションの準備を早めることができる。
システムテストのコアチームは製品開発サイクルの早い段階でシステムテストの一部を実行しているため、コードの品質はフルシステムテスト開始時には一定の水準まで高まっており、これによりシステムテストチーム全体の生産性に確実にいい影響を与える。さらに、初期のシステムテスト作業をシステムテストコアチームが行い、続けて製品リリース前の集中フルシステムテストを行うというリリースサイクルは、従来の開発/テスト手法よりも高い品質を提供することができる。
ただ、本稿執筆時点では最終システムテストのイテレーションにはまだ入っていないことに注意したい。この開発イテレーション中、ストレス関連やメモリリーク関連のバグの一部は、正式なシステムテスト開始前に排除できなかった。
本稿で解説したプロジェクトは、小規模のものだ。参加したのはマネージャ、アーキテクト、開発者、そしてテスターを含めて約55人だ。チーム全体はさらに12の小チームに分かれており、これには今回の開発のベースとなった2つのオープンソース技術に取り組むチームも含まれていた。小チームはそれぞれ別の場所で作業をしていたが、各チームのサイズが小さいため、プロジェクト全体でアジャイル開発の手法を採用することはかなり容易だった。
ウォーターフォール手法を使った前年のプロジェクトも、今回のプロジェクトで使われた技術の予備知識となった。アジャイルコンセプトへの移行は、この技術に関する予備知識によって容易になった。今回のプロジェクトでは、新技術の導入に伴う問題は発生しなかった。
第1イテレーションは、すでに開発が進んでいた成果物を完成させ、アジャイルプロジェクトを開始する移行のためのイテレーションとして使われた。アジャイル開発への移行は控えめに始まり、最初の2つのイテレーションでは開発目標は控えめに抑えられた。チーム全体における個人間の文化の構築と、新しい環境におけるチーム成功のための初期システムテストアプリケーション並行開発・実行といったプロセスの確立に主眼が置かれた。本プロジェクトの結果から、ウォーターフォール開発からアジャイル開発への移行には十分な時間をかけた方がいいことが分かった。
システムテストコアチームは、6回のイテレーションにわたって開発チームと共同で作業を行った。これにより、従来のシステムテストアプリケーション開発と実行の一部がイテレーションごとに実現した。この並列化は、以下のような成功へとつながった。
メアリー・エレン・カー(Mary Ellen Kerr)
WebSphere Application Serverのシステムテスター。IBMには25年間在籍している。
カート・J・ルーセ(Curt J. Rousse)
WebSphere Application Serverのシステムテスター。IBMには30年間在籍している。
ドナ・P・ダインズ(Donna P. Dynes)
WebSphere Application Serverの開発マネージャ。IBMには26年間在籍している。
デビッド・ブーズ(David Booz)
IBMのシニア・テクニカル・スタッフ・メンバー。IBMのOSおよびミドルウェア部門に19年間在籍している。
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