ニコンの新しいデジタル一眼レフ「D5000」を使ってみた。昨年2月に発売した初級機「D60」と、昨年9月に発売した中級機「D90」の中間に位置するエントリーユーザー向けの製品だ。
手にした第一印象は、これまでのD60やD90と大きく変わらない。外装は、表面に梨地塗装を施したエンジニアリングプラスチックで、特に高級感はないが、かといって安っぽくもない価格相応の質感だ。デザイン的には、最近の同社製品に共通した、ペンタ部のV字型の切り込みやグリップ部の赤い三角形を継承し、ひと目見てニコン機だと分かる。サイズは、奥行きと高さがD90よりもやや増えているが、全体の体積と重量ではD60やD90のほぼ中間くらいといえる。
D60やD90と決定的に違うのは、液晶モニターが可動式であること。液晶上部の端にある突起を指で引っ張ると、下方向に最大180度まで開き、さらに左右方向に最大270度まで回転する。そして、ボディ背面の「Lv」ボタンを押すと液晶にライブビューが表示され、液晶画面を見ながらの撮影ができる。
このフリーアングル液晶+ライブビューによって、ローアングル撮影やハイアングル撮影がずいぶんと楽になる。通常のファインダー撮影では気づきにくい、新鮮な構図を見つけやすいともいえる。液晶をレンズ側に向け、自分撮りをすることも可能だ。また、収納時は液晶面を内側に向けて閉じることで、液晶にキズが付くのを防ぐことができる。
コンパクト機「COOLPIX」シリーズでは、これまでにもフリーアングル液晶の製品を発売しているが、同社のデジタル一眼レフでは本機が初のフリーアングル対応となる。しかも、かつてのCOOLPIXのように左右開きの液晶ではなく、下開きであることが面白い。
下方向に開くメリットは、カメラを両手で構えた際に液晶がジャマにならず、ボディをしっかりと支えられること。また、左右開きに比べて、レンズと液晶のそれぞれの中心軸にズレが少なく、ライブビュー撮影時に構図を合わせやすいといえる。逆にデメリットは、雲台の台座が大きい三脚を使った際に、回転に制約が生じる場合があることだ。
液晶サイズは2.7型で、ドット数は約23万ドットとなる。D90の3型約92万ドットに比べて見劣りするが、表示の色や明るさ、視野角などは良好で、屋外でもまずまずの視認性がある。
ライブビュー時のAFは、「顔認識AF」「ワイドエリアAF」「ノーマルエリアAF」「ターゲット追尾」の4モードから選択できる。「顔認識AF」は、コンパクトデジカメでおなじみの機能で、人物の顔を自動検出してピントを合わるモードだ。「ワイドエリアAF」と「ノーマルエリアAF」は、背面のマルチセレクターによって測距点を画面内の好きな位置に動かせるモードだ。
「ターゲット追尾」は、任意の被写体に測距点を重ねた状態で、マルチセレクターの上を押すと、その被写体にピントが合い、測距点がロックオンされるモードだ。いったんロックした被写体が画面内を上下左右に動いた場合、その動きに追尾して測距点が自動的に動く。ただし、カメラから被写体までの距離が変わった場合にピント位置が自動追尾するわけではない。撮る際にシャッターボタンを半押しすると、再びAFが作動しなおしてから撮影が行われる。
以上の4モードは、いずれも撮像素子のコントラストによってピントを判断する「コントラスト検出方式」となるため、残念ながらAFスピードは遅い。どのモードでも、シャッターボタンの半押しで測距がスタートするが、ジジジジジーと駆動音が鳴っている間は待たされ、しばらく経ってからピピッという合焦音が鳴る。
ノーマルエリアAFでの測距時間をストップウォッチで測ってみると、キットレンズの18ミリ側で約2秒強、55ミリ側で約1.5秒という結果だった。同じ条件で、通常のファインダー撮影(位相差検出AF)の場合は、18ミリ側でも55ミリ側でも0.5秒以下と非常に高速だ。動きのある被写体を撮るには、ライブビューよりもファインダー撮影のほうが適している。本機に限らず、現状ではデジタル一眼レフのコントラストAFは動体撮影には向かない。
ただ、AFは遅いものの、アングルの自由度が広がることや、撮る前に発色や露出を確認できることなど、ライブビューならではのメリットは十分に実感できた。
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