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ヤマハ「NP-S2000」が誘うハイレゾ音源の心地よい世界山本浩司の「アレを“聴く”なら是非コレで!」(2/2 ページ)

» 2011年02月25日 13時32分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 NP-S2000のDACチップは、24ビット・タイプのバーブラウン「PCM1792A」で、それを左右それぞれに1基与えた差動方式が採られ、アナログ音声回路は全段完全バランス伝送となっている。内部をのぞくと、中央手前にEIコアタイプが、後方にトロイダルコアタイプが配置されたツイントランス構成。林立するローカルレギュレーターの設計を含め、充実の電源回路が注意深く構成されていることが分かる。

アナログは全段完全バランス伝送。電源回路には、トロイダルコアとEIコアのツイントランスとし、デジタルとアナログを完全に分離したセパレート式を採用している

アナログ音声出力端子は、XLR(バランス)、RCA(アンバランス)を各1系統。デジタル音声出力端子は光および同軸を各1系統備える。もちろん同社製プリメインアンプの「A-S2000」とのバランス接続が可能だ

 対応デジタルファイルは、非圧縮のWAV、可逆圧縮(ロスレス)のFLACの他、MP3、WMA、AACの非可逆圧縮(ロッシー)フォーマットを含めた5つ。最高レゾリューションは96kHz/24ビットだ。また、本機には入力された音源の解像度のまま出力できるデジタル同軸/光(トスリンク)端子も用意されている。操作面では、付属のリモコンに加え、iPod/iPhone用の専用操作アプリ「Network Player Controller」を用意しており、AppStoreから無償ダウンロードが可能だ。

iPod/iPhone用の専用操作アプリ「Network Player Controller」

ビートルズがやってきた? ハイレゾ音源の実力

 2月上旬、試聴機をお借りし、ぼくのリスニングルームで改めてじっくり本機の音を聴いてみた。XLRバランス出力を愛用プリアンプにつないで試聴を開始。チャーリー・ヘイデンの新作CDからメロディ・ガルドーの歌うヴォーカル・トラックをEACでリッピングしたFLACファイルをまず聴いてみたが、その音の厚み、揺るぎない低音の安定感に支えられた力感あふれる音像描写に一瞬のうちに心を奪われた。まったく音像がにじまないヴォーカルの空間定位のみごとさに、本機の電源回路の優秀さ、本格的な筐体設計が採られたドライブレス・プレーヤーのメリットを実感する。また、この音に匹敵するCDプレーヤーを買うとしたら、いったいいくら支払わなければならないのだろうとも思った。

PCの「DIXiM Media Server」と接続中。フォルダや音楽タイトルなどもフロントパネルで確認できる

 「e-onkyo music」のサイトからダウンロードしたMAレコーディングスの96/24FLACファイル「セラ・ウナ・ノーチェ」を聴いてみたが、ワンポイント・ステレオ録音ならではの空間情報の豊かさが圧倒的な説得力で迫ってきた。収録された修道院教会の天井の高さや車座になって演奏するメンバーの姿がありありと思い浮かべられるような臨場感の凄さに、NP-S2000で聴くハイレゾファイルのスリルをまざまざと実感する。

「ハイドン:ピアノ協奏曲/ローランド・バティック(ピアノ)」はクリプトンの「HQMストア」で配信中。FLAC 96kHz/24bit。全トラックを購入した場合は3150円

 クラシック音楽のインディペンデント・レーベル「カメラータ・トウキョウ」のハイレゾ音源を多数擁する「HQMストア」のラインアップから「ハイドン:ピアノ協奏曲/ローランド・バティック(p)」を聴いてみよう。これは、2009年6月にウィーン近郊のホールで96kHz/24ビットでデジタル録音された作品。フリードリヒ・グルダの薫陶を受けたバティックの、カデンツァで聴けるジャズ的な即興がじつにチャーミングだ。ピアノを取り囲むように扇型に配置された弦楽セクションの<かたち>が目に浮かぶような音場表現のすばらしさにも驚かされる。

 2009年に発売され、世界中でバカ売れしたビートルズのリマスターCD。そのステレオ・ヴァージョン14作品のデジタルマスター(44.1kHz/24ビット)をFLACファイルで収録したUSBメモリーがその後発売されたが、ぼくはその音源を自分のNASにコピーして保存している。その中から最後のスタジオ録音作品「アビィロード」から「カム・トゥゲザー」を聴いてみた。CDとの聴き比べで明らかになるのが、NP-S2000で聴くハイレゾファイルのスケール感と立体感の豊かさ。時空を超えて4人のメンバーがぼくの部屋にやってきて目の前で演奏してくれているかのようなイリュージョンが味わえるのだ。

 ここで試みに本機のデジタル同軸出力をぼくの愛用D/Aコンバーターである英国コード社の「QBD76」につないで聴いてみたが、ポールのベースとリンゴのドラムズがパーンとスピーカーから張り出してきて一瞬オオッと。そういえばこの躍動感に満ち溢れた元気のよい音に痺れてこの単体DACを買ったんだったと、昔のことをまざまざと思い出した。

 いずれにしても、約20万円という値段で何百万円もする超ハイエンド・プレーヤーで聴く16ビットCDを凌ぐ音の可能性を実感させるNP-S2000の凄さに改めて畏敬の念を覚えた試聴だった。ぜひ多くの音楽ファンにNP-S2000の音に触れていただきたいと願う。

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