次は設置角度を調整する。基本的にスピーカーは2本の前面(スピーカーユニットが設置されている側。バッフル面などとも呼ばれる)を一線上に平行で置くのが理想だ。ただし、スペースの限られる机上は理想的な距離間隔で置けないことの方が多いと思う。そういった時は、角度を付ける(向きを変える)ことで音質を調整するのだ。オーディオ用語では「内振り/外振り」と言う。
まず、スピーカーを平行に置いて聴く。人の声がいつもより薄く感じたり、音が遠い(または左右バラバラになって、音が混ざっていない)と感じたら、少しずつ内側に向けてみる(内振りにしてみる)。あるポイントで、音質やサウンドフィールドがだいぶ改善されて聞こえるようになるはずだ。
気を付けてほしいのは、角度は左右同じ(左右線対称)にすること、そしてあまり大きく振りすぎないこと。いきなり角度を付けると、帯域特性も崩れるのでかえって音色がおかしく感じることになりかねない。一応、5.1チャネルなどのシアター系音響システムとは異なり、バッフル面がリスナーへまっすぐ向くほどの角度だと少しやりすぎである。
一方、スピーカー間の距離があまり取れず、ステレオイメージがはっきりしないならば、スピーカー外向き(外振り)にすることで改善されることもある。ともあれ、軽めの角度で少しずつ何度か聞き比べながら、自分の気に入る角度を見つけてほしい。
最後に、インシュレータの利用も勧めたい。ここで言うインシュレータとは、機器の振動を抑え、機器や素材で干渉させないためにスピーカーの下に置くものだ。机上に置くPCオーディオ利用において、PCデスク類は基本的に本格スピーカーの設置を想定したつくりにはなっていない。インシュレータは、スピーカーの振動が過大に伝わってさらなる雑音が発生するのを防ぐ──という意味で、手軽なPCオーディオにおいてもやはり効果があると思う。
チェックは、机に手を置いてみるだけで分かる。このシステムで聴くであろう最大音量で再生し、手がしびれるほどブイブイ豪快に振動しているならインシュレータが必要だ。対して、ごく低い帯域で小さくゴーゴー振るえる程度に制振できれば良好である。
ではどんな素材のものを敷くか。軟性ゴム系のもので振動を完全にシャットアウトするのも手段の1つだが、逆にそれだと腰砕けな音になってしまうスピーカーもあったりする。スピーカーは、ガッチリしっかり置かれてはじめてその実力を発揮できるものも多いのだ。
というわけで、インシュレータとする素材は真ちゅうなどの柔らかめの金属→木材→硬質ゴムの順で試してみるとよい。環境やシステムによって結果は異なるので、どの素材が適するか自身で見分ける必要があるのだが、ポイントは振動をすべて吸収してしまうのではなく「ある程度は残す」ようにすることである。
まずは大きめの6角ナット、おもちゃの積み木、振動吸収用のゴムマットなど、手元にあるもので音がどう変わるか試してみてはいかがだろう。机に伝わる振動をある程度解消しつつ、スピーカーがしっかり動いてくれている、よいアンバイのポイントがきっと存在する。若干高額なオーディオ専用に作られたインシュレータ製品も数多く存在するが、こちらはある程度の方向性が見えてから試すのでも遅くはない(オーディオ機器用インシュレータは、びっくりするような価格のものもあるので……)。
スピーカーセッティングは、一朝一夕ではいかない部分は確かにある。逆にいえば、それだけ音の変化が見込め、楽しむための要素も多いということ。うん、確かに面倒だが、オーディオ趣味の醍醐味(だいごみ)の1つである。
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