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測定結果をネットで共有できるGPS付き放射線カウンター「PiPi」橘十徳の「自腹ですが何か?」(2/2 ページ)

» 2012年06月29日 13時43分 公開
[橘十徳,ITmedia]
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ガイガーミュラー管の電圧をモニター表示

 測定モードは、シンプルに定点の放射線量を測定する「停止モード」(GPSオフ)と、位置情報を付けて定点の放射線量を測定する「停止モード」(GPSオン)、移動しながら1分間の平均値を10秒ごとに更新して表示・記録する「移動モード」(GPSオン)の3モードが用意されている。電源スイッチを入れると自動的に放射線の測定が開始されるので、この状態でGPSボタンを長押しすればモードが順番に切り替わる。現在どのモードになっているのかは、GPSランプのオン・オフと、移動モードのときだけ表示される人型のアイコンの有無で分かる。

 放射線の測定中は、放射線を検出するごとにCPボタンが光り、「ピッ」と音が鳴るが、この音はけっこう耳障りだ。そんな場合はGPSボタンとCPボタンの同時押しで音を消せる。

 測定開始時はすぐに測定数値が表示されず、停止モードでは最初16CPまで表示されない。また、移動モードでは最初の1分間までは測定誤差が大きいため測定値が表示されず、一定の時間が経たないと表示されない。

 表示される数値は「検出された放射線の総カウント数」(cp)、「放射線の計数率」(cpm)、「測定秒数」、「空間線量率」(μSv/h)、「統計誤差」(%)、「高圧電源モニタ」「電池交換表示」(電圧2.0ボルト以下で不足表示)の7項目。このほか、GPSボタンの長押しで高電圧モニター(ガイガーミュラー管を駆動するために必要な高電圧電源のモニター)を確認することが可能で、Trans(ガイガーミュラー管の電圧のモニター表示)とBatt(電池の電圧)が表示される。

停止モード時の表示(左)。移動モードでは人型のアイコンが表示される(中)。高電圧モニター(右)

 高電圧モニターは正常であれば1.7〜2.2ボルトを表示するが、なんらかの原因で電圧が降下すると正しい測定ができなくなるため、このような場合はメーカーに頼めば有償で再調整してくれる。また、この製品はCs137で校正が行われているが、しばらく経って再校正が必要になった場合も有償で対応してくれるという。

 なお、車に乗って移動しながら測定する場合は、GPSの電波が入りやすい場所にしっかりと固定しよう。測定中に落とすとガイガーミュラー管が割れてしまうこともあるので注意が必要だ。

保存したデータはWebサイトにアップロード

 記録した測定値を確認するには、いったんインターネットにアップロードする必要がある。アップロードにはWindows用ソフト「PiPi Data Uploader」をインストールし、PCとPiPiをUSBケーブルで接続したあとに、ソフトウェアからの操作でアップロードする。アップロードする際はデータの公開・非公開を選択可能で、非公開にすれば自分のデータはほかの人には見えない。位置情報が含まれたデータを公開する際はプライバシーの問題に気をつけよう。なお、アップロードしたあとに公開/非公開を選ぶことも可能だ。

USBケーブルでPCと接続する

 ちなみに同社ではこのように放射線情報を共有してマップ上にデータを投稿するプロジェクトを「RISM」と称して、PiPiのユーザーに協力を呼びかけている。放射線量の投稿サイトはほかにも数多くあるが、測定器を1機種に限っているサイトは珍しく、同一機種による比較が広範囲にできるという点においては価値があると思う。ただしPiPiに限っているだけに投稿されている情報量は多くはないので、ほかの放射線量投稿サイトと組み合わせて参考にするといいだろう。なお、空間線量を測定するためにはβ線を遮断するためのアルミカバーを付けた状態で測定するよう指定されている。混乱を避けるためにもこのようなルールはしっかりと守りたい。

RISMのサイト(左)。Google Earth上に表示(右)

 サイトにアップロードしたデータはGoogleマップ上に表示されるほか、KMZファイルをダウンロードしてGoogle Earth上で見ることも可能だ。また、CSVファイルも用意されており、ダウンロードして表計算ソフトでも管理できる。ただ、できればPCに接続して直接データをダウンロードできるともっと良かったと思う。

Googleマップ上に表示(左)。CSVデータの内容を表計算ソフト上に表示(右)

 さて、実際に自動車のダッシュボードに乗せて移動モードで測定してみた。GPS衛星を捕捉するまでの時間が長く、測定開始時は位置がなかなか安定しないが、しばらくすると実際の軌跡に近くなる。建物が密集した場所では誤差が大きく、測位精度にはそれほど期待しないほうがいいが、だいたいの位置を把握するには十分だと思う。衛星捕捉時間が長めなので、移動モードで使うときなどは、出発する前にある程度余裕を持って事前にスイッチを入れておくほうがいいだろう。

 最近では放射線測定機能付きのスマートフォンも登場しているが、PiPiならスマートフォンと違って維持費がかからないのが魅力だ。購入することが被災地への支援につながるというのも意義深く、このような製品の登場には拍手を送りたい。

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