前回の掲載から、ずいぶん、間が空いてしまった。
前回のコラムでは、大型有機ELテレビの生産で韓国の2社が予想以上に苦戦しているという話を書いた。当初から55インチのOLEDなんて難しいと思っていた……という日本メーカーの声も聞こえたが、それもまた結果論だ。そして、結果として4Kパネルとアップコンバート技術へとスポットライトが当たっているのが現状……というお話だった。
もっとも、4K2Kパネルを使ったテレビは、商品化で1年先行し、第2世代製品の来春投入を明らかにしている東芝“レグザ”、LG電子製の84V型IPS液晶パネルを用いたソニーの“ブラビア”「KD-84X9000」ぐらいしかない(プロジェクターは筆者も使っている「VPL-VW1000ES」がある)。ということで、選択肢が豊富になるのはまだ先だ。しかし、いずれにしても有機ELテレビの低価格化よりは、ずっと早いペースで4K2Kの導入は進んでいくと予想している。
まず、シャープがICCの4Kアップコンバート機能を搭載したテレビを、今年中にもリリースするとの話が耳に入ってきている。すでに年末向け製品の発表は終えた後だが、ギリギリのタイミングで機種が追加されるとみられる(100%ではない)。
UltraHDと名付けられたICC+4Kパネルだが、色再現傾向などは従来のシャープとは異なるもので、よりナチュラルかつ階調性が高い印象だ。ICCの画の良さも手伝って、ハイエンドのテレビに相応しい仕上がりになるだろう。開発途上でさえ、そのデキは抜きんでたものであった。60V型というサイズも、日本の住宅事情を考えれば84V型よりもはるかに現実的な選択肢だろう(もちろん、84V型を導入できる資力と場所があるなら問題はないのだが)。
もっとも、アイキューブド(I3)研究所を設立した近藤哲二郎氏が、「あれは古い技術。比べないでほしい」という、ソニーのデータベース型超解像技術も、昔のDRCのままで技術が止まっているわけではない。フルHDの放送、Blu-ray Discタイトルから4K2K映像を作り出すアルゴリズムで、どのやり方が一番好みなのかは、意外に意見が分かれるものだと思う。
例えば、まだ4K2Kテレビは発表していないパナソニック(正確には超大型ディスプレイとしては存在する)だが、ソニーの「BDZ-EX3000」と同様、Blu-ray Discレコーダーの最上位モデル「DMR-BZT9300」には4Kアップコンバート機能を搭載している。最上位モデルだけを4K出力対応にしたのは何も相談したわけではなく、まだコストのかかる処理ということだ。
さて、このDMR-BZT9300の4Kアップコンバート。全く期待せず、「VPL-VW1000ES」にHDMIで接続し、VPL-VW1000ES内蔵のデータベース型超解像と比較してみた。すると、DMR-BZT9300の4Kアップコンバートの方が、ピントの合った部分からボケにかけての表現が自然で、スッキリとした奥行きのある映像になる。
あるいは、テクスチャーの情報がグッと増し、彫りが深くなったように見えるところなどは、VPL-VW1000ES内蔵の方が良いかもしれないが、映像全体を見渡した時のバランスはDMR-BZT9300の方が好ましい。4Kアップコンバートは機器の特性に合わせてチューニングが必要と思っていただけに、これはちょっとした驚きだった。
これだけ完成度が高い4Kアップコンバートを搭載してきたということは、そう遠くない将来、パナソニックも一般層が購入できる価格レンジで4K2Kテレビを発売するということだろう。年末はないかもしれないが、年明けにも65インチ程度のサイズでの発表があるかもしれない。
4K2Kパネルは、液晶の場合は特に画素走査の速度的な限界から、倍速数を上げにくいという問題もあるが、これもいずれは解決していくだろう。画素密度の製造歩留まりには実は問題なく、今のボトルネックは4KアップコンバートのLSIにかかるコストだといわれている。言い換えれば、半導体技術の進化速度と同じように、あれよあれよという間に、4K2Kの時代がやってくるはずだ。
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