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IPDC型マルチスクリーン放送サービスとは?数年後の実用化を目指す

» 2012年12月05日 16時10分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 テレビ視聴中にタブレット端末などに向けて関連情報を配信する「マルチスクリーン型放送サービス」の実用化に向けた動きが活発化している。NHKの「HybridCast」に加え、2011年12月には大阪で「マルチスクリーン型放送研究会」が発足し、IPDC型のサービスを提案。12月5日に開幕したビデオリサーチのプライベート展示会「VR FORUM 2012」でも同研究会がデモンストレーションを披露した。

「マルチスクリーン型放送研究会」のデモ。対応テレビはパナソニックが試作したものだ(左)。IPDC型の技術解説(右)

 マルチスクリーン型放送研究会は、放送局主体のマルチスクリーン型放送の実用化を目指し、関西テレビや朝日放送などの在阪テレビ局、広告代理店、関連メーカーなど43社が発足した業界団体。技術検討とサービスの研究に加え、放送関連イベントの「IMC TOKYO 2012」や「InterBEE 2012」に出展するなど、積極的に広報活動を展開している。

 同研究会が提案する「IPDC型」(IIPデータキャスト)は、IPパケットを変調して放送波に載せる方式で、NOTTVの蓄積型放送サービスなどに利用されている。地上デジタル放送に応用する場合、データ放送の帯域を一部“間借り”して下り1Mbps程度の転送量を確保。上りにはインターネットを利用するという。放送波からIPパケットを取り出し、コンテンツを同期させるためにテレビ側には対応ハードウェアが必須となるが、タブレット端末側は専用アプリを導入するだけでいい。番組とタイミングを完全に合わせたリッチコンテンツを提供できるのがメリットだ。

 「番組のコーナーからコーナーへの切り替わり、CMの入るタイミングなど、放送のスケジュールを知っているのは放送局だけ。放送局が主体になることで、メイン画面(テレビ)と完全に同期した関連情報を提供できる」(説明員)。

 デモンストレーションでは、競馬中継に連動したサービスを披露。オッズの確認はもちろん、出場馬の人気投票、Twitterと連携して応援メッセージを送るといった使い方を提案している。また、テレビ画面ではレース全体の映像を映しているときに、タブレット上では人気の馬を別カメラで捕らえた映像を見ることができるなど、マルチアングル放送のような使い方もできる。コンテンツは一般的なHTMLで記述するため、放送局側にとってもハードルは低い。

注目馬だけを追うカメラの映像をタブレットに映し出したり、出場馬の人気投票に参加したりとさまざまな使い方ができる

 放送がCMに切り替わると、手元のタブレットにも登場する商品の詳細情報やキャンペーン情報が表示される。購入やキャンペーンへの登録も手軽に行える。「例えば、番組に出てきた気になるお店の情報を後で検索しようと思っても、忘れてしまうことは多い。視聴者に対する情報提供がタイムリーになれば、放送局は番組やCMのバリューを上げることができる」。

 マルチスクリーン型放送研究会では、2013年度の早い時期にIPDCフォーラムと規格化に向けた仕様の提案を行う方針。実証実験などを行い、2〜3年後の実用化を目指す。また、HybridCastなど目的の近い提案に関しては、「協力できるのであれば協力していきたい」と話していた。

※初掲載時、記事中にIPTVフォーラムという記載がありましたが、IPDCフォーラムの誤りでした。お詫びして修正いたします。

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