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録画やネットワーク視聴も視聴率に、ビデオリサーチの新たな取り組み

» 2012年12月05日 21時43分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 ビデオリサーチは12月5日、プライベート展示会「VR FORUM 2012」を開催し、開発中の視聴率計測手法を披露した。これにはレコーダーの普及で増加しているタイムシフト視聴やDLNAによるネットワーク視聴など、テレビ視聴環境の多様化に対応する技術も含まれている。

メインステージのデモ。ベッドルームのDLNA対応テレビでネットワーク視聴した場合でも、番組の放送日時やチャンネルが特定できるという。もちろんリアルタイム視聴率には反映されないが、番組の影響力を測る指標にはなる

 現在の視聴率調査は、テレビを所有する世帯のうち、「どの程度の世帯がテレビをつけ、どの放送局の番組を見ていたか」を示す指標だ。さまざまな世帯に調査用の「チャンネルセンサー」や「オンラインメータ」と呼ばれる機材を置いて計測、オンラインで集計する。ただし、調査はあくまでリアルタイムのテレビ視聴が前提で、録画番組の視聴などは含まれていない。

 一方、デジタル機器の進歩により、テレビの視聴方法は多様化している。PCにデジタルチューナーが搭載され、レコーダーでは複数番組の録画が当たり前だ。さらにDLNA/DTCP-IPにより、タブレット端末やスマートフォンでネットワーク視聴するケースも増えている。今後はVOD(ビデオ・オン・デマンド)による“見逃し視聴”なども含め、既存の方法だけでは対応しにくい。同社では2011年からチューナー内蔵PCも視聴率調査の対象としたが、さらに対応デバイスを広げる必要があると認識している。

 環境の変化に対応するため、開発した調査手法は多種多様。例えばタイムシフト視聴に対しては、音声透かし技術やフィンガープリント技術を提案している。このうち音声透かしは、テレビ放送の音声に人には聞こえない信号を混ぜ、調査機器のマイクで計測するというもの。レコーダーで長時間録画した番組でも「ある程度までは対応できる」(同社)としている。

 実用化に際しては、放送局側で音声透かしの埋め込みが必要となるため、専用のリアルタイム音声透かし埋め込み装置「SKC-1000」(試作機)を開発した。また、この技術を応用し、タブレットやスマートフォンにテレビ番組と同期した情報を配信するマルチスクリーン技術も検討中。IPDC技術を採用したマルチスクリーン型サービスと異なり、既存の規格と技術だけで実現できるサービスとして訴求する。

音声透かし埋め込み装置「SKC-1000」の試作機(左)。音声透かしは、今すぐ使えるセカンドスクリーン型放送サービスとしても訴求(右)

 一方、DLNAやVODによるネットワーク視聴に対しては、パケット解析技術を用いた測定装置を提案している。宅内のルータに専用の「VODアダプター/DLNAアダプター」を接続し、LAN内を流れるIPパケットを解析。「どのレコーダーの録画番組を視聴しているか」「どのVODサービスを利用しているか」まで測定できるという。

パケット解析技術の解説

 これらの技術は研究段階であり、実用化の時期などが決定しているものではない。ただし、タイムシフトにデバイスシフト、プレイスシフトなどと言われるテレビ視聴の変化に対し、視聴率調査会社も対応が求められる時代になったことは確かだ。

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