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見放題を“使い倒す”方法、教えます──Huluトップページの秘密(2/2 ページ)

» 2013年11月12日 12時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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11月1日にアップされた「わんこ特集」。サブタイトルは「やっぱり犬も好き」。いろいろと便乗している

 「はい。便乗させていただきました」と笑うリー氏にとって、ネットのリアルタイム性は大きな武器だという。特集の制作は、テーマに合った作品をピックアップしたら、画像などの素材を集めてページを作るだけでいい。タイミングを見てタイトルを変え、ユーザーの声を反映して修正を行うこともできる。

 「例えば、規模の大きいリアル店舗で特集のような企画をやろうとすると、仕入れのリードタイムや販促物の作成などにかかる時間を考えなければなりません。どうしても1カ月後とか、先の話になってしまいます」。しかしオンラインなら、時間的なロスはあまり考えず、逆に旬な特集を提供することで時間を味方にもできる。

 11月には、犬が出演する作品を集めた特集がアップされた。ご想像の通り、理由は11月1日が“犬の日”だから(わんわんわん)。今までにあまりなかった切り口であるとともに、「きっと2月22日には猫好きのための特集がアップされる」などと期待させる効果もある。「猫が出演する映画は意外と少ないので検討中ですが、オンラインならではの小回りの良さは大きな強みですね」(同氏)。

求められるのは、“全米ナンバー1”ではない

 特集テーマに沿った作品をピックアップできるだけのコンテンツがそろっていることも重要だろう。Huluの場合、常時1万以上のコンテンツを用意しており、新しいパートナーシップも積極的に進めている。11月からは「TBSオンデマンド」から3000本以上のドラマやテレビ番組がリストに加わり、得意の海外コンテンツに加えて国内の作品も大幅に増えた(→関連記事)。

 1つの特集に入れるコンテンツ数は十数本から二十本程度。「なるべく多くの作品をカバーしたいと思っていますが、普段はスポットライトの当たらない、埋もれている作品を発掘してユーザーに提案することも重要です。例えば“倍返し”の復讐劇特集にはバイオレンス作品なども含まれています。普段は見る人も偏りがちなジャンルですが、テーマを入り口にすると見ない方々も見やすくなるようです」。

 ちなみに、“復讐劇”特集で最初にトップタイトルとして挙げたのは、「オールドボーイ」だった。12年前の作品で知名度も高いとはいえないが、想定を超えるユーザーが視聴してくれたという。

 「日本は世界2位の映像市場で、子どもの頃から劇場やテレビまで映像に親しんでいます。求められているのは、“全米ナンバー1”ではありません。もちろん、Huluは米国生まれなので良い部分は吸収していきますが、それよりも日本にマッチしたものを出してくことが大事だと考えています」。

 目の肥えた消費者は、週ごとのランキングがベースで年間56本も出てくる“全米ナンバー1”が、あまりアテにならないことはよく分かっているが、映画産業に長く関わってきた人の口から聞くと真実味も増す。もちろん映画好きだからこそ、口に出せる言葉だろう。

 「私は、『映画は日常からのエスケープ』という言葉が好きです。非常にベタですが、トップクリエイターほどこれを言いますよね。以前は私もベタすぎる思っていましたが、Huluに入ってよく感じるのは、ネガティブな現実逃避ではなく、前向きなエスケープがとても楽しいということ。もともと映像エンターテイメントが一番得意としている部分であり、自分たちはその手助けをしているのだと強く思っています」(リー氏)。

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