「FMたちかわ」など全国のコミュニティFMラジオ局39局は2月26日、日本レコード協会およびソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)を相手取り、サイマルラジオにおける商業用レコードの利用許諾について契約上の地位を仮に定める旨の決定を求め、東京地方裁判所に仮処分命令の申し立てを行った。
今回の申し立ては、2月9日に日本レコード協会から全国48局のコミュニティFMに送付された「催告書」が発端。コミュニティFMがスマートフォンやPC向けに提供しているサイマルラジオ放送聴取アプリ「Listen Radio」の“音楽番組まとめチャンネル”「Find your music」について、2月末日までに「Find your music」を通じた配信を中止しなければ、 サイマルラジオに対する楽曲使用の許諾契約を解除すると通告するものだった。
催告書では、「Find your music」を「情報料または広告料等収入がなく、 放送区域内における電波不到達地域の解消を目的とした通信に係る使用料規程細則の適用基準に違反する」と指摘。しかしコミュニティFM側の担当者は、「違反に該当する事実はなく、または既に解消されている。 許諾契約を解除する理由は存在しない」と反論している。
実は、日本レコード協会は以前から「Find your music」を問題視していた。コミュニティFM側によると、1年以上前から日本レコード協会と話し合いの場を持ち、指摘された問題点を解消しようと努力してきたという。例えば「Listen Radio」アプリ内にあった「Find your music」という表記は削除。また音楽番組まとめチャンネルでは現在配信中の曲と、その後に配信する楽曲名をチャンネルごとに参照できるが、2月末で事前の楽曲名表示については廃止する方針だ。
「レコード協会側の要求に沿った形にしようとしていたにも関わらず、2月9日になって、突然“催告書”が届いた」。コミュニティFM側は、催告書を事実上の“サイマル放送中止要求”と受け止め、「話し合いによる解決の可能性は消えつつある」と判断。仮処分命令の申し立てに踏み切った。
「仮にサイマルラジオ許諾契約が解除された場合、 音楽を伴う番組配信を行うための権利を日本レコード協会以外から得ることは困難で、電波不到達地域の解消など各FM放送局が担ってきた公共性、 サイマル放送継続に対するリスナーの期待などを考慮した結果、39局が一丸となって法的的続きをとることにした」。
なお、相手方にSMEが含まれているのは、昨年の話し合いの中で、レコード協会側から何度もSMEの名前が出てきたため。周知の通り、SMEは日本レコード協会の主要会員であり、「Music Unlimited」など音楽配信サービスに力を入れている。しかし、コミュニティFM側の“音楽番組まとめチャンネル”は、実質的に視聴者に無料で最新の音楽番組を常時提供できるため、SMEの事業にとって障害になっているという。
「今回の“サイマル放送中止要求”は、SMEがレコード協会に対して自らの影響力を不当に利用したものであると考えざるを得ない」(コミュニティFM側の担当者)。
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