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ついに発売された新生テクニクス「C700シリーズ」、製品版の音をじっくりとチェックする山本浩司の「アレを見るならぜひコレで!」(3/3 ページ)

» 2015年03月23日 10時29分 公開
[山本浩司ITmedia]
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ハイエンドライクな表現力

 パナソニックセンター東京のテクニクス試聴室は、テクニクスの創設者の一人である室内音響研究家の石井伸一郎さんが提唱する「石井式音響理論」に基づいて設計されており、天井が約4メートルとひじょうに高い。理想的な低音の伝送特性を得るためには、部屋の縦寸法の0.74倍の天井高が必要という石井理論に従っているからだ。

 「ST-C700」に聴きなれたハイレゾファイルを収めたUSBメモリーを挿し、KRYNA製の鋳鉄製スピーカースタンドに載せた「SB-C700」を「SU-C700」で鳴らしてみた(ST-C700とSU-C700は同軸デジタル接続)。

 まず感心したのは、豊かな音場感とピンポイントでフォーカスするシャープな音像定位、それにローレベルの精妙な表現力だった。

「SHANTI'S LULLABY」(日本コロムビア)

 デビュー作以来、ハイレゾファイルの売り上げが好調なSHANTI(シャンティ)の新作「ララバイ」から、ビリー・ジョエルのカバー曲『グッドナイト・マイ・エンジェル』(96kHz/24bit、WAV)を聴いてみたが、 2本の「SB-C700」の間にシャンティの声がぽっかりと浮かび上がり、ピアノの横にすくっと立って歌うシャンティの姿がまるで目に見えるかのよう。また、ピアニストがフットペダルから足を離したときに生じるアクションノイズも実に生々しく、演奏空間の精巧なレプリカが試聴室に再現されたかのようなその表現力の豊かさに、C700シリーズの類稀な実力の高さを思い知らされた次第だ。約45万円のシステム価格で、こんなハイエンドライクな表現力を持った組合せを見つけるのは難しいだろう。

 「SU-C700」のLAPC機能のON/OFFも試してみた。予想通りというか予想以上にその違いは大きかった。LAPCをオフにすると、ピアノとボーカルのファントム定位が曖昧になり、オン時に実感できた三次元的な立体音場が後退し、L/スピーカーの間に音像がべったりと張りついたようなイメージになるのである。「SU-C700」の目覚ましいLAPC機能、ぜひ他のスピーカーとの組合せもテストしてみたい。

「SU-C700」の背面端子

 また、今述べたような三次元的な立体音場をこのシステムから得るには、まずスピーカーの「SB-C700」を本棚やラック、テレビ台の中などに押し込めて使わないこと。頑丈なスピーカースタンドを用意し、できるだけ後ろや左右の壁から離してセッティングすることが肝要だ。このシステムの実力を発揮させるために、ぜひこの点は留意してほしい。

 少し不満に感じたのは、シャンティのヴォーカルの質感がやや乾いた質感に感じられるところ。声の潤いや艶やかさが表現されるようになるともっと魅力あふれるシステムになるはず。それから、今のところスピーカーのSB-C700 はホワイト仕上げのみということだが、ピアノブラックなどがラインアップされるとなおいいのに……と思う。白いスピーカーがフィットするインテリアって案外難しいのだ。

 なにはともあれ、ハイレゾ時代の本格化に合わせて、テクニクスならではのさまざまな提案が盛り込まれたC700シリーズのテイクオフを歓迎したい。筆者個人としては、パイオニア「BDP-LX88」や米OPPO Digital「BDP-105DJP」などに負けない、テクニクス・ブランドのハイクオリティーなユニバーサルBDプレーヤーが見てみたいとの願望があるが、それはいずれ近いうちに規格策定が完了するといわれている4K(UHD)対応のBlu-ray Discの登場を待ってからということになるのだろうか。

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