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大きくなってきた“8Kの足音”――NHK技研公開2015(2/2 ページ)

» 2015年05月27日 20時39分 公開
[天野透ITmedia]
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これが8Kのホンキ、JVC共同開発のフルスペック8Kプロジェクター

 今回の技研公開における目玉展示の1つは、JVCケンウッドと共同開発した8Kプロジェクターだ。NHK技研はこれまでも8Kプロジェクターをアップデートしてきたが、今回展示された最新版は、120Hzのフレーム周波数、BT.2020の色域をサポート。そして4Kプロジェクターと同じ1.3インチサイズのLCOS素子を用いた3300万画素の3板式と、スーパーハイビジョンのフル規格に対応した。昨年までとの大きな違いは、JVCのe-shiftデバイスがLCOSのリアル8Kデバイスに置き換えられたことだ。これにより画素ずらし方式の欠点だった精細感の甘さや動きぼけを克服した。光源にはRGB三原色の半導体レーザーが用いられており、BT.2020が要求する広い色域をほぼカバーしている。

JVCと共同開発されたフルスペック8Kプロジェクターの最新バージョン

 展示では専用の暗室に450インチの巨大スクリーンが用意され、青い蝶や黄色や紫の花、紅いオウムなど、色にフォーカスを当てた被写体が次々と映し出される「Colors」という撮りおろしのプログラムを公開。フルスペック8Kが持つ表現力の高さを披露した。

色とりどりの被写体が映しだされた「Colors」。精細感が非常に高いため、写真ではまるで実写のように写る ※8Kプロジェクターの投影映像です

8K伝送実験も

 来年の試験放送を見据えた伝送実験も今回の技研公開におけるテーマの1つだ。NHK技研では地上波と衛星双方の技術研究を進めており、今回は実験中の技術がどちらも公開された。

お台場に設置した8Kカメラのリアルタイム放送デモ

 衛星放送では、来年の試験放送を想定した12GHz帯の広帯域衛生伝送実験が展示された。8K衛星放送では、搬送電波に16通りの振幅・位相差を与える「16APSK」という変調方式を採用したことで、従来よりも大容量のデータ転送を可能にする。現在、空き電波となっているBS 17chを使い、渋谷のNHK放送センターから衛星へ飛ばした電波を、技研に設置したアンテナで受信していた。さらに今回は、お台場に設置されたカメラからの映像を衛星に飛ばすリアルタイム放送のデモも披露している(発信側の伝送装置は技研、発信アンテナ自体は放送センターと、それぞれ別の場所にあるので、発信アンテナまでのお台場〜技研〜放送センター間は光回線を用いている)。

衛星伝送実験の概略図

 地上波の伝送実験は、昨年の熊本県人吉での実験に続いて行われた。今回は、技研から8キロメートル離れた渋谷の放送センターへ電波を飛ばし、それを2回線の光ファイバーで技研へ転送している。前回の人吉は混信の可能性が低い、いわば「電波にとって都合のいい場所」だったが、今回は渋谷〜世田谷間という、さまざまな電波が飛び交う都市部での実験だ。アンテナのサイズは通常のUHF用八木・宇田アンテナと変わらないが、平行方向に加えて垂直方向にも輻射器や導波器の棒が付いている。

水平方向に加え、垂直方向にも素子の棒を取り付けた8K用の八木・宇田アンテナ。大きさはUHF用とあまり変わらない

新世代の記録装置

 大容量の8Kコンテンツを収録するための、ストレージに関する研究も公開された。中でも注目は新日鉄住金と共同開発したホログラムメモリだ。専用の樹脂板に光の入射角を変えながら多重記録を行うというもの。

ホログラムメモリ。見た目のイメージとしては、お土産によくあるガラスの立体彫刻で、3次元QRコードのようなものを記録するという感じ

 今回展示されたものは平行方向の角度変化に加えて、記憶媒体を90度ずつ回転させた面にそれぞれ記録することが可能となった。これにより従来方式の4倍にあたる記録密度を達成。会場では75Gバイトのデータ容量を持つ、3センチメートル四方の特殊な樹脂板が持ち込まれた。読み取り機は汎用品を組み合わせた構成のために大型となっていたが、専用構成を開発することで小型化し、再来年くらいには実用化にこぎ着けたいと話していた。

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