今回はaptX対応スマートフォン「Xperia Z2」と組み合わせて音質を確認した。聴感上のバランスがとてもナチュラルで、いろいろなジャンルの音楽から大事な要素を余計な脚色なく素直に引き出す。
ボーカル曲はジェーン・モンハイトのアルバム「The Heart Of The Matter」から「Sing」を聴いた。特に中高域の音を強く、ストレートに伝えてくる。ボーカルの声はエッジのキレ味が鋭く、澄み渡っている。量感もしっかりとありながらリズムは軽やか。余韻は少しあっさりとしていてドライな印象を与えるが、ロングトーンはふくよかでボーカリストの生の声質が良く見えてくる。アコースティック楽器の響き方もややドライに感じられるが、アタックの瞬発力に富んだ軽快なテンポを引き出す良さがある。楽器の音は輪郭が少し太めの線で描かれる印象だ。
TM NETWORKのアルバム「Self Control」に収録された「Maria Club」では、複雑なアレンジから細かい音を1粒ずつ丁寧に拾う。音のつながりがスムーズで、全体にまとまり感もある。低音は力強く、さらに重心も低く安定している。粒ぞろいの良いリズムセクションが演奏の緊張感を引き締める。
ボーカルはバンドの要の位置に定位して、少し手前気味に張り出してくる。声に雑味がなく、ディテールの表情はクリアに見渡せる。主役を引き立たせるバランス感覚だ。音場は少しコンパクトだが、強弱のバランスが良く、ディテールも細かい所まで描きながらドライブ感あふれる音楽をつくり出す。ロックやポップス系で、ビートの効いた音楽には特にマッチすると感じた。
オーケストラは「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 アレクシス・ワイセンベルク/ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリンフィル」のピアノコンチェルトから「第1楽章:モデラート」を聴いた。悠々とした壮大なスケール感の描写も得意らしい。
さまざまな楽器の音色と強弱の繊細なニュアンスも明快に色濃く伝わってきた。オーボエなど木管楽器の暖かい音色が、耳の奥に入ってゆっくりと溶けていくようななまめかしさがある。ピアノの音もフォーカスが定まっていて、やや硬質で余韻が淡泊に感じられるが、空気の中にすうっと消えていく潔さも味わい深い。弦楽器のハーモニーはしなやかで優しい丸みを帯びたセクシーな音だ。低域は太くなり過ぎず、正確で力強いインパクトを重視した音づくりの方向性を感じさせる。
B&Wらしい高級感のある外観ながら、そのサウンドはユーザーの好きな音楽に自然体で寄り添ってくれるような、どこか人なつっこくてカジュアルな印象を与える。市場想定価格は5万1500円前後(税込)と決して安くはないが、ハイレゾ再生から「Apple Music」などの音楽配信サービスまで、“メインの1台”としていろいろなリスニングシーンで使い倒したくなる、柔軟性に富んだヘッドフォンだ。
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