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8K試験放送、8月スタートに向けて準備着々――最初は公開視聴のみ

» 2016年02月27日 17時11分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が主催する「4K/8Kソリューションミーティング」が今週、都内で開催され、会員各社が4K/8Kや次世代スマートテレビに関連する機材やソリューションの現状を報告した。ワークショップに登壇したNHK技術局スーパーハイビジョン開発部の専任部長 増原一衛氏は、8月開始予定の4K/8Kスーパーハイビジョン試験放送に向けた機材開発の進捗を説明した。

NHK制作の8K PRビデオの1コマ

 スーパーハイビジョンは、現行フルハイビジョンの16倍にあたる8K(7680×4320ピクセル)解像度に加え、60p/120pの高フレームレート、10bit階調、広い色域(Rec.2020)、HDR(ハイダイナミックレンジ)といった要素を取り込んだ高画質の次世代テレビ放送だ。22.2ch音響を最上位フォーマットとするマルチチャンネル音声も合わせ、テレビの映像と音を飛躍的に進化させる。

スーパーハイビジョンの特徴

 総務省が策定したロードマップでは、年内にBSの高度広帯域伝送方式を利用した4K・8Kスーパーハイビジョン試験放送」を開始する計画。具体的には、BS 17chを使って「8月1日から毎日10時〜17時のうちの6時間、NHKとNexTV-Fが時間を分けて試験放送を行う」(増原氏)

スーパーハイビジョン設備整備ロードマップ

 ただし、一般の家庭で8Kを視聴できるのは、当分先になりそうだ。当初は全国のNHK放送会館などに対応機器を置き、公開視聴――いわゆるパブリック・ビューイングという形を想定しているという。「今年のリオデジャネイロ五輪、2017年の平昌冬季五輪、2018年のサッカーワールドカップロシア大会と毎年のように大きなイベントがある。それをリアルに伝えたい」(増原氏)。NHKでは、試験放送を通じて広色域化やHDRといった新技術も実用レベルに引き上げていく考えだ。

 一方、一般家庭に導入する際に使われるCAS(Conditional Access System:放送の限定受信システム)は、仕様の策定自体が「まだ、これから」(同氏)という状況。一般家庭で8K放送を楽しめるのは当分先のことになりそうだ。

夏のリオデジャネイロオリンピックでは、現在2台しかない8K映像中継車のうち1台を現地に持ち込む。この中継車は、55インチの8Kモニターや4台の録画再生機、4台のスロー再生機を備えており、10台までの8Kカメラを運用できる
全国のNHK放送会館などに置く8K受信装置のシステム。映像でHDMI×4本、音声でHDMI×3本を使用する。音声は市販の7.1ch対応AVアンプ3台を用いて22.2chを再現

 また、4K/8Kスーパーハイビジョンに盛り込まれる120Hzの高フレームレート化について、NHKでは「次のフェーズ」として捉えている。「高フレームレート化は、まだ“研究所レベル”だ。2020年の東京五輪に向け、実現していくことになるだろう」(増原氏)

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