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楽器とオーディオのコラボが生んだジャンル違いの兄弟機――カワイ「NOVUS NV10」とオンキヨー「A-9150」

» 2017年06月29日 21時03分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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 メーカーや製品ジャンルの枠を超えた兄弟モデルというものが存在するのであれば、河合楽器製作所のデジタルピアノ「NOVUS NV10」と、オンキヨー&パイオニアのステレオプリメインアンプ「A-9150(S)」は該当するかもしれない。2015年に資本業務提携を交わした両社は6月29日、互いに影響を与えながら作り上げた新製品の合同発表会を開催した。

河合楽器製作所のデジタルピアノ「NOVUS NV10」と、オンキヨー&パイオニアのステレオプリメインアンプ「A-9150(S)」

 NOVUS NV10は、河合楽器が創立90周年を記念して発売するハイブリッドデジタルピアノだ。NOVUSは、ラテン語で「新しい」「新鮮な」という意味。デジタルピアノとしては画期的な「ダンパー機構」によってダンパーペダルが踏まれているときの鍵盤タッチまで再現。さらにオンキヨーとのコラボレーションによるオーディオ技術の搭載など、「新しいハイブリッドピアノという意志を込めた」(同社)

NOVUS NV10は、88鍵すべてが異なるグランドピアノのタッチ感を再現している。さらにダンパーペダルが踏まれていると鍵盤タッチが軽くなるという点まで再現したのが、新しい「ダンパー機構」だ

 NOVUS NV10は、河合楽器の最高峰フルコンサートピアノ「SK-EX」の鍵盤をマルチチャンネルでサンプリングした音源を採用しているが、音の解像感を上げるためにオンキヨーの1bitプロセッシング技術やノイズを低減するDIDRCフィルターを搭載した。さらにスピーカーを駆動するパワーアンプ、ヘッドフォン使用時にもリアルな音が聞けるヘッドフォンアンプ回路など、デジタルピアノならではの出力部にハイクラスオーディオの技術を盛り込んだ。

従来のデジタルピアノとの違い
実際に使用されたパーツ類

 一方、オンキヨーブランドのステレオプリメインアンプ「A-9150」は、新開発のディスクリート型アンプモジュールを搭載したパワフルなアンプだ。近年、人気が再燃しているアナログレコード需要に応えるため、MM/MCの両カートリッジに対応した専用フォノイコライザーを搭載。しかも本体にリレー式の切替スイッチを設けたことで、どちらを選んでも基板上の伝送経路を最短化する仕組みだ。

「A-9150」

 またデジタル入力(光2、同軸2)では最大768kHz/32bitのDACチップを採用し、D/A変換時に発生する高周波ノイズを独自のDIDRCフィルターで除去するなど、同社の培ってきた技術をふんだんに盛り込んでいる。さらにNOVUS NV10の開発を通じて得た知見とノウハウが随所に生かされているという。

 オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン営業本部の八重口能孝氏によると、河合楽器との協業は当初、製品の販売を中心に両社の流通リソースを有効利用するためのものだったという。しかしコンセプトモデルの開発などを通じて音響面の意見を交わし始めた途端に意気投合。「楽器の音をオーディオでどう鳴らすか。今までは“聴く側”の意見ばかりで、楽器製作者や演奏者の声を聞く機会にはあまり恵まれていませんでした」と振り返る。

 意見の多くは「よりシビアなもの」だった。それに刺激を受けたオンキヨーの技術者たちは、製品設計はもちろん、パーツの選定や配線の引き回しといった細かい部分に至るまで「変わった」という。こうして楽器製作や演奏者の意見をフィードバックしたA-9150は、「楽器の響きや演奏時のニュアンスの違いまでも高い次元で再現できるアンプになった」と八重口氏は胸を張る。

 「オーディオファンはもちろん、楽器に親しむ方々にも注目してほしい。そんなアンプに仕上がりました」(同氏)

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