いま最も話題の携帯電話といえば、ツーカーの「TS41」である。製品名をいうよりも「骨で聞く携帯」といったほうが、ピンとくるかもしれない。
TS41は、通常のスピーカーのほかに「ソニックスピーカー」と呼ばれる骨伝導方式のスピーカーを備える。この部分に触れるとよく分かるが、音を振動で伝えるものだ。これを耳の周りの骨などに当てることで、鼓膜以外の部分からも音声が伝わる。
骨伝導方式は固定電話などでは数年前から存在し、耳が遠い高齢者などに最適だと言われてきた(2002年1月の記事参照)。今回世界で初めて携帯電話に搭載されたことで、「騒音のある場所でも聞き取りやすい」とアナウンスされているが、実のところはどうか。実際に試してみた。
今回「騒音のある場所」の例として選んだのは、1)赤坂のゲームセンター 2)電車が出入りする地下鉄駅ホーム の二つ。いずれも相当うるさく、顔を寄せ合わないと会話も難しい場所だ。
TS41は、着信したときに本体を開いて通話ボタンを押すと普通の携帯のようにスピーカーから音が流れる。ソニックスピーカーを使うには、閉じたまま背面キーを押して電話を取る。
早速騒がしい2カ所で電話を受けてみた。ソニックスピーカーをアゴや額、下顎角(エラ骨)などに当てて、相手の声に耳を(骨を?)すます。
どうもおかしい。まったく聞こえないわけではないのだが、“骨”よりも“耳”に当てたほうがよく聞こえる。ソニックスピーカーよりも、本体を開けて耳に当てたほうが音声がクリアだ。
「個人差があります」とは書かれているものの、編集部の男性2人がそろって同じ感想を漏らすのは、きっと使い方が悪いに違いない。そう思って、ツーカーに連絡してみた。
「耳からノイズが入ると聞き取りにくくなるので、指などで耳をふさいでみてください」
なるほど。そうアドバイスを受けて、実際に試してみた。
これがびっくり。これまで微妙だった骨からの音が、、耳に指を入れるだけで明瞭に聞こえる。それどころか、アゴに当てても、(静かなところでは)鎖骨に当てても聞き取れた(個人差があるので注意)。
実は昨日TS41について、聴覚専門医の方から編集部にメールをいただいている。「騒音のある場所では耳穴からのノイズが内耳に到達し、骨導音とミックスするので、骨導音がマスキングされます。骨導音よりも騒音のエネルギーが高いところではやはり聞こえが悪くなるはずです。自分の声にも周囲の騒音が入るので相手も会話しにくくなります。前者の解決のためには外耳道を塞いで、周囲の気道音をブロックすればいいのですが、それも効率よくするためには説明に加えるべきでしょう」
つまり指や耳栓で耳をふさぐことで、骨伝導の効率が大きく上がるということだ。例えば右耳に指を入れて、左のアゴにTS41を付けると、右耳から音が聞こえてくる。効果を実感できる瞬間だ。
“骨で聞く”は真だった。試してみて、おかしいな? と思った方は、耳に指を入れてもう一度試してみてほしい。
さて、上で「骨よりも耳に直接当てたほうが聞きやすい」と書いたが、これについて補足しておきたい。
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