堕ちたIPモバイル電話――JMネットの“闇”(2/3 ページ)

» 2004年01月23日 13時46分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ジャパンメディアネットワークのサービスが、各メディアに紹介され、世間に認知されていくのに、そう時間はかからなかった。

 しかし同時に、われわれと同様の疑問を持つユーザーも増えてきた。インターネットの掲示板などでは、「サービスの実現は不可能」と断じるユーザーも少なくなかった。

 実現が定かでないものを、なぜあえてアナウンスするのか。この説明として、消息筋の間でしばしば指摘されたのが、2003年11月末までジャパンメディアネットワークの親会社だった大盛工業の存在だ。大盛工業は、2002年11月30日にジャパンメディアネットワークが行う第3者割当増資を引き受け、持ち株比率が45.5%で事実上の子会社化した(2003年7月期末時点では、持ち株比率は81%に達している)。

 これと前後して、大盛工業の株は上がり始める(Yahoo!ファイナンス参照)。大盛工業自体は2002年7月期末段階で、32億4700万円の債務超過状態だっただけに、子会社化したジャパンメディアネットワークにモバイルIP電話という壮大な花火を打ち上げさせることで、兜町筋の思惑をあおったのではないか。そういう噂がくすぶり続けているわけだ。

 大盛工業は、ジャパンメディアネットワークに出資して通信事業に進出し、その後撤退した経緯を次のように説明する。

 「(建設業を手がける関係から)通信の鉄塔などを持つため、ジャパンメディアネットワークが投資先として浮かんだ。しかし、想像より費用がかかり、資金がかさむということで昨年に撤退を決めた」(同社IR担当)。

 ジャパンメディアネットワークの企業活動が注目を集め、結果としてそれが大盛工業株の材料視されたことを聞くと「それよりも、早期に事業が立ち上がり、連結決算として弊社に寄与することを期待していた」とコメントした。

 現在、大盛工業は弁護士を通じて、ジャパンメディアネットワークに行った融資の回収を目指しているという。

TBS訴訟の「不思議」

 こうした状況下で、ジャパンメディアネットワークを大きく揺るがす事件が起きた。3月17日、TBSが「ニュースの森」「ニュース23」で、同社のサービスが実現不可能ではないかと、強く疑問視する報道を行ったのだ。

 同社の反応は、素早かった。ただちにニュースが事実に反している旨を自社サイト上で説明するとともに、4月15日付けで、TBSを相手どった訴訟を起こしている。「信用を著しく毀損された」として、1100万円の損害賠償を請求する内容だった。

 真剣に事業に取り組む立場からすれば、当然の対応だろう。だが10月に入ると、原告側は一転して請求を放棄する。これにより、判決の言い渡しを待たずして民事訴訟は終了となった。

 TBS広報は、“請求の放棄”とは、「原告が、自らの請求に理由がないことを認める裁判所に対する意思表示」であることを指摘した上で、こう話す。

 「裁判所で立証されたわけではないが、事実上、われわれの報道が正しかったことを示すものと考えている」。

「WIRELESS JAPAN 2003」への出展

 この訴訟が争われている間に、ジャパンメディアネットワークは2003年7月に、大きなアクションを起こしている。「WIRELESS JAPAN 2003」への出展だ。

 同社は会場で、比較的大きなスペースを確保し、大々的なデモを行った。公けの場での展示だけに、この時は編集部もさすがに記事として取り上げたが(7月16日の記事参照)、記事にあるとおりブースで“目玉”とされたのは、「mobcom」と呼ばれるサービスだった。

 mobcomは技術的に新味がなく、業界を驚かせるほどの画期的なサービスではない。一方、MobdeMはというと、mobcomの陰に隠れるように、ブースの隅のほうでひっそりと展示されていた。端末の横にあったパネルには、サービスの進捗状況として、相変わらず「キャリアとの交渉が難航している」と記載されるにとどまっていた。

Photo ブースで展示されていた携帯電話と、アダプタ。記者が過去に見たモックアップとは、多少外見が変化していた

他社製品を不正利用?

 その後も、ジャパンメディアネットワークをめぐる騒動は続く。2003年8月25日には、ジャパンメディアネットワークから端末のOEM供給をうける、TTMコミュニケーションに絡んだトラブルが発生した。

 問題になったのは、TTMコミュニケーションが提供する、携帯電話のアダプタに接続すれば割安通話が実現する端末――MobdeMのコンセプトに似た製品――「ホーダイクン」である。ホーダイクンは、アペルが提供する自動ダイヤラ「アペルロム」と同一商品ではないか、との疑いが取りざたされたのだ。

 この一件は、アペル側でも当然問題視した。それを裏付けるように、同社のサイトには、いまだにトップページの目立つ位置に以下のような文言が記載されている。

 「TTM社製携帯電話用ロム『ホーダイクン』につきまして、弊社製品とは全く無関係であり、弊社製品を不正に改装または偽装して販売しているものであると認識しております」。

Photo 携帯電話の自動ダイヤラ「アペルロム」

 同社の広報に、当時のいきさつについて聞いた。

 「ある時、たまたま弊社の端末を、名義を隠して大量に購入した形跡があることが発覚した。これがどこに流れているのか、疑問に思っていた」。

 事態は、意外なところから動く。アペルロムは、コンビニから料金の補充が可能なのだが、都内のコンビニで、「何百枚というロムに、3000円をチャージする人間がいた」という通報があったのだ。あまりに大量の支払いなので、店側が不審に思ったのだという。

 「そして、そのロムは先ほどのルートから流れたものだった」(アペル広報)。

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