次に取り上げるのは、タワーレコードのフリーマガジン「bounce」だ。1982年に「WEST COAST MUSIC SCENE」の名前で創刊、以来音楽ファンにとってもはや老舗の同誌だ。今後のケータイメディアミックスに対する展望を、「bounce」の発行を行うNMNLの経営企画室 谷河立朗室長に伺った。
「1979年に日本へ上陸して以来、タワーレコードにとってフリーペーパーは一貫して重要なメディアでした。以前は輸入レコードに関する情報が少なかったので、それをフォローする役割もありましたし、今では来店促進メディアとして大きな役割を果たしています」(谷河室長)
全国のタワーレコードで無料配布されている「bounce」の発行部数は40万部。「単一の音楽雑誌と考えると、おそらく日本一の発行部数」(谷河室長)と語る通り、「bounce」は音楽ファンにとって大きな影響力を持つだけでなく、かなりの来店効果も上げているようだ。
「bounce」は、同社がeコマースから着信メロディ配信までを手がける総合音楽情報携帯サイト「TOWER MOBILE」と、コンテンツ面でも連携している。「bounce」に掲載されている、バイヤーによる「バイヤーズレビュー」なども携帯サイトから閲覧可能なほか、携帯会員は「ユーザーズレビュー」として好きなアーティストCDの感想も投稿可能だ。
同サイトで、CD製品に付いている「規格品番」を入力すれば、売られている新譜・旧譜のすべてのデータにアクセスできることは意外に知られていない。ただ「品番のデータベースとしての価値はもっと活用していきたいところだが、実際、新譜になると規格品番がまだ確定していない段階で「bounce」の原稿を入稿しなければならない場合も多い」とも谷河室長は説明する。印刷メディアとWebメディアのタイムラグを埋められる企画のあり方も今後の課題といえそうだ。
谷河室長によれば、「bounce」は今後も、モバイルとのより効果的な連動を模索していくという。「規格品番にQRコードも連携するなどして、よりダイレクトにCDの情報にアクセスできるようにしたいし、店頭だけでは扱いきれないアイテムを購買に結びつけるようなモデルも将来は手がけていけたらと思っている」(谷河室長)
最後は7月1日に本創刊したばかりの、リクルートの団塊ジュニア向けフリーマガジン「R25」だ。
今年3月に首都圏を中心に試験的に4回に渡って配布された同誌だが、プレ創刊から誌面クオリティの高さと、とても無料とは思えない広告の少なさで、広告業界に衝撃を与えたのは記憶に新しい。
「『R25』は、その名の通り、25歳以上から30代前半までの団塊ジュニア世代がターゲットです。この世代の男性は全般に他の世代・性別に比べて、消費意欲があまり高くなく、加えて、情報や消費に対しても興味関心が高いとは言えない層。そうした団塊ジュニア男性へのリーチを狙いたかった」と語るのは、リクルート ペーパーポータル推進室田端信太郎氏だ。
確かに各種の指標を見ても、団塊ジュニア男性は、週刊誌/月刊誌を問わず、お金を出して雑誌を買わない人が増えており、新聞の購読率すらかなり下がっている。都市部のビジネスマンとなるとさらに多忙で、テレビもあまり見ないという傾向が顕著だ。
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