予測変換機能以外の日本語入力環境を見たとき、水面下にあったキーワードは“モードレス”だ。
当初、文字を入力するときは漢字モード/カタカナモード/英字モード/数字モード/絵文字モードを切り替えながら入力するのが当たり前だった。しかし日本語入力時、漢字以外のカタカナや英字、数字を入力する頻度は相対的に低い。いちいちモードを変えることなく、カタカナ、英字、数字を入力するにはどうしたらいいか。
筆者が知る限り、これに最初に取り組んだのはボーダフォン(当時はJ-フォン)向けのシャープ製端末だ。「J-SH06」あたりから搭載された「カナ英数字変換」は、漢字モードのまま、「2/か」「0/わ」「0/わ」「4/た」と入力してボタンを押すと、「2004」と候補に登場する機能だ。同様に英字もカタカナも、“モードを切り替えたつもりで”入力すれば候補として表示される。
もう1つの改善点は絵文字だ。iモード登場当時から存在していた絵文字だが、熱烈な愛用者がいた割には入力しやすいものではなかった。絵文字一覧を表示させる専用のボタンが設けられたのは、504iシリーズの頃から。2003年頃にはさらに使い勝手が向上し、利用した絵文字の履歴が登録される学習機能を搭載した機種も出始めた。頻繁に使う絵文字は候補として表示され、探す必要なく入力できる。
こうしたモードレスの流れとともに、文字入力を行うボタンも改善されてきた。現在必須となっているのが、「大文字/小文字」切り替えボタンと、ボタンを押しすぎた場合にもどせる「逆トグル」ボタンだ。
予測変換機能の成熟度では他社の追随を許さなかったPOBoxだが、こうした入力環境の整備では他社の後塵を拝していた。それを一気に最高の水準まで持って行ったのが、「SO506iC」と「W21S」だ。
まず「W21S」では「英数カナ」ボタンが備えられ、英字や数字カナへの変換が容易になった。さらに、予測候補の末尾に英数カナボタンを押したのと同様の数字/カナの候補が追加された。英数カナボタンを押さずとも、ジョグダイヤルを逆回しすれば、簡単に数字/カナが入力できる(5桁まで)。
合わせてモードの切り替えも他社並に。やっと「文字」ボタンを1回押せばカタカナモードに、2回で英字、3回で数字に変わるようになった。
絵文字と記号も専用ボタンが設けられた。「W21S」では学習機能も備えており、よく使う絵文字や記号は簡単に入力できる。
もちろん、「大文字/小文字変換」ボタンや「逆トグル」ボタンは搭載済みだ。
もう1つ、予測変換では単漢字の候補が出にくいという問題があった。例えば「き」と入力して「奇」とか「器」を選択するには難しかった。「き」から始まる多くの単語の候補に埋もれてしまうのだ。そのため予測を行わない通常の変換方式も用意されているのだが、別の「変換」ボタンを押さなくてはならないため分かりにくいという難点があった。「SO506iC」では、通常変換の候補も予測変換候補の最後に必ず表示することで、この問題に対処している。
こうした改良によって、予測変換機能だけでなく入力環境の面でもPOBoxを搭載したソニー・エリクソン製端末がトップレベルに舞い戻ったのは間違いない。唯一気になるのは、濁点/半濁点の単語の扱いだ。
例えば「元気」という単語を入力したとしよう。POBoxでは、この単語を予測候補として呼び出すには「げ」と入力する必要がある。ところが最近進化が著しいATOKでは「け」と入力すれば「元気」が予測候補として表示される。
これは一歩間違えると、予測候補が爆発的に増え、かえって精度を落とすことにもつながりかねない。ただし最近のATOKを見ている限り、濁点/半濁点を入力する必要がないほうがメリットを感じることが多い。POBoxの予測機能で唯一不満を感じる点だ。
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